
連載
そうだ アニメ,見よう:第241回はCygamesPictures制作の「光が死んだ夏」。謎の“ナニカ”に変貌した親友をめぐる青春ホラー作品
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モクモクれん氏がWeb漫画サイト「ヤングエースUP」で連載中の「光が死んだ夏」(角川コミックス・エース/既刊7巻)は,田舎の集落で発生する怪事件を描いた青春ホラー漫画だ。モクモクれん氏のデビュー作となる本作は,2021年の発表以来,「このマンガがすごい!2023」や「マンガ大賞2023」など,数々の賞に選出されている。
というわけで,「そうだ アニメ,見よう」第241回のタイトルは,同作をアニメ化した「光が死んだ夏」(毎週土曜日24:55〜日本テレビ系ほか)。制作はCygamesPicturesが担当し,シリーズ構成・監督は「エロマンガ先生」や「夜のクラゲは泳げない」の竹下良平氏が務めている。
「光が死んだ夏」
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その半年後の夏のある日,よしきはヒカルに「お前やっぱ光ちゃうやろ」と問いかけた。よしきは,いつものように隣で笑うヒカルが,親友とは声も見た目もそっくりだが,実は違う“ナニカ”になっていることに気づいていたのだ。
息苦しい僻村で幼い頃から共に生きてきた,唯一の心許せる存在を失いたくなかったよしきは,そんなニセモノのヒカルを受け入れ,誰にも明かさないことを約束する。
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そんな折,ヒカルを見て「ノウヌキ様が下りてきとる」と叫んだ老婆・松浦が翌日変死した。よしきはスーパーで出会った主婦の暮林理恵(CV:小若和郁那)から,クビタチの山から嫌な感じが消えて,よしきと一緒にいる“ナニカ”のせいで町や村が狂い出していると告げられる。「一緒にいないほうがいい」
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集落で起きた怪事件がクラスで話題になる中,級友の巻(CV:中島ヨシキ)が「自分も呪われているかもしれない」と言い出す。普段は使わない林道を通って帰宅しようとした際,恐ろしい体験をしたと言うのだ。
よしきは巻の懇願を受け,話を聞いていた級友の朝子(CV:花守ゆみり)と結希(CV:若山詩音),そして興味を示したヒカルとともに林へ足を運ぶ。よしきはそこで得体の知れない怪異“ケガレ”と遭遇するが,ヒカルによって事なきを得るのだった。
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因習が息づく田舎の集落が舞台
肉親や恋人,親友といった自分のよく知る人物の中身が,ある日別の“ナニカ”にすり替わっていたとしたら。そんな背筋の凍るようなシチュエーションを描いているのが本作「光が死んだ夏」だ。
舞台となるのは,雄大な山岳に囲まれた集落「クビタチ」。作者のモクモクれん氏は,三重県の山間部の田舎をイメージしており,作中には三重弁が登場している。
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クビタチには,三百年以上前から伝えられてきた“儀式”が存在していた。それはヒカルの生家,忌堂家の男子が代々口伝で執り行ってきたもの。ヒカルはその儀式のために入山したのではないかと推測されるが,真相は分からない。
しかし,このヒカルの一件をきっかけに,集落ではさまざまな事件が発生し始める。老婆の変死,怪異“ケガレ”の出現,異常者の発生など,平和だったはずのよしきの日常は狂気に侵されていく。
本作は,田舎の集落に受け継がれる因習や,グロテスクな怪異たちなど,ホラー要素が“これでもか”というほど詰め込まれた,まさに真夏の夜にふさわしい作品だ。
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よしきとヒカルの心の葛藤
ところで,「スワンプマン」という言葉を知っているだろうか。これはアメリカの哲学者ドナルド・デイヴィッドソン氏が1987年に提唱した思考実験で,沼で雷に打たれた男が死亡し,たまたま化学反応により,人間と同じ状態を持つ存在が生成された場合,その「沼男(Swamp man)」は死んだ男と同一の人物と言えるのか,という問題提起が主題となっている。
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作中でも登場するこの思考実験は,本作のメインテーマとも言えるもの。“ナニカ”と入れ替わったヒカルは,生前の記憶に基づいて前と変わらない行動をとるが,よしきに指摘された通り,やっぱりニセモノなのだ。
ヒカルとなった“ナニカ”は,自分のアイデンティティを確立できずに思い悩む。一方よしきも親友であったヒカルと同じ姿をした“ナニカ”を受け入れるかどうか苦悩する。
この2人の心の葛藤を,アニメでは非常に丁寧に描写している。田舎の風景やちょっと視線の移動,無言の間など,表情や言葉以外でよしきとヒカルの感情を表現しており,アニメーションならではの演出に感心させられた。
そんな2人の関係が今後どう変化していくのか,見どころのひとつとなりそうだ。
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ドロドロアニメーターが参加
ヒカルの中にいる“ナニカ”は,外に出たときアメーバのような,異次元チックな姿で登場する。これを表現しているのが“ドロドロアニメーター”として参加している平岡政展氏だ。
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平岡氏は日清カップヌードル「アオハルかよ。」のCM映像や「チェンソーマン」のエンディングなどを手掛けた,アーティスティックな演出に定評のある人物。動きの粘度や重み,広がっていく際の気持ち悪さを細かく意識して,視聴者に強い印象を残せるよう工夫していると,“ナニカ”の表現について語っている。
本作では,平岡氏以外にもキャラクターデザイン・総作画監督の高橋裕一氏など,多数のベテランクリエイターが参加している。監督の竹下氏をはじめとしたスタッフのこだわりの制作スタイルを収録したメイキング映像も公開されているので,ぜひチェックしてほしい。
寝苦しい夏の夜におススメの作品
よしきの決意の回となったEpisode7がオンエアされ,いよいよ“ナニカ”の正体を探る活動が始まった。クビタチの儀式に隠された真実とは何なのか。一連の事件のカギを握る人物・田中(CV:小林親弘)もよしきに接触し,物語が急展開している。
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ただ,原作はまだまだ続いているので,どこまでアニメ化されるかも気になるところ。かなりのハイペースでアニメは進行しているので,もしやオリジナルも挟まるのかもしない,とか予想しつつ,今後の展開から目が離せなくなりそう。
猛暑のおかげで寝苦しい夜を過ごしている人は,ホラーテイストあふれる本作で涼しんでみてはいかがだろう。
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TVアニメ「光が死んだ夏」公式サイト
TVアニメ「光が死んだ夏」公式X
放映データ |
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2025年7月〜毎週土曜24:55〜日本テレビ系ほか |
キャスト | |
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辻中佳紀:小林千晃 | |
ヒカル:梅田修一朗 | |
山岸朝子:花守ゆみり | |
暮林理恵:小若和郁那 | |
田中:小林親弘 | |
暮林理恵:小若和郁那 | |
巻 ゆうた:中島ヨシキ | |
田所結希:若山詩音 |
スタッフ |
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原作:モクモクれん(KADOKAWA「ヤングエースUP」連載) |
監督・シリーズ構成:竹下良平 |
キャラクターデザイン・総作画監督:高橋裕一 |
ドロドロアニメーター:平岡政展 |
プロップデザイン:應地隆之介 |
サブキャラクターデザイン:渡辺 舞、西願宏子、長澤翔子 |
美術設定:多田周平、高橋武之、曽野由大 |
美術監督:本田こうへい |
色彩設計:中野尚美 |
色彩設計補佐:越田侑子 |
3D監督:中野祥典 |
撮影監督:前田智大 |
2Dデザイン:永良雄亮、津江優里 |
編集:木村佳史子 |
音響演出:笠松広司 |
音響制作:dugout |
音楽:梅林太郎 |
オープニング主題歌:「再会」Vaundy |
エンディング主題歌:「あなたはかいぶつ」TOOBOE |
アニメーション制作:CygamesPictures |
■Blu-ray&DVD情報
光が死んだ夏
第1巻 Blu-ray&DVD
2025年11月26日(水)発売
【品番】
Blu-ray:KAXA-9091
DVD:KABA-11701
【価格】
Blu-ray:1万4300円(税込)
DVD:1万2100円(税込)
【収録内容】
本編+特典映像
初回生産特典
アニメ描きおろしジャケット
特製ブックレット
【収録内容】
キャストインタビュー、スタッフインタビュー、設定資料、OPカラースクリプトほか
毎回特典
メイキング
PV集
予告映像
※商品仕様・価格などは予告なく変更になる場合がございます。
(C)モクモクれん/KADOKAWA・「光が死んだ夏」製作委員会
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