紹介記事
【case.III 広幡カイシャ】不老不死を求める彼との物語――“花”としてお世話される「OVERNIGHTZ」被験報告
Rejetによる新作シチュエーションCDシリーズ「OVERNIGHTZ」(オーヴァーナイツ)は,2025年10月の始動以来,「case.I 鷹司アオ(CV.小野友樹)」「case.II 裏辻リノ(CV.吉野裕行)」と物語を紡いできた。その魅力を追うべくお届けしてきた「被験報告」も,いよいよ今回が最終回。これまでの聴取で得られた観察結果や注目点を整理していく。
今回取り上げるのは,12月24日発売の「case.III 広幡カイシャ(CV.鳥海浩輔)」。記事の最後には,一足先に本編を試聴した関係者からのコメントも掲載しているので,ぜひあわせてチェックしてほしい。
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被験者概要:将来を嘱望されながらも“孤独”を抱えた歌人
今回,被験者として選定されたのは,歌詠みの家系に生まれた広幡カイシャ。
将来を有望視されていたものの,父からは「唯一の落ちこぼれ」と扱われ続け,ついに認められる日は訪れなかった。家族の“愛”に触れられず育った彼は,物語の随所で孤独への恐れを覗かせている。
広幡カイシャ(CV:鳥海浩輔)
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| PROFILE | |||
| 年齢 | 19歳 | 身長 | 177cm |
| 体重 | 66kg | 好きなもの/嫌いなもの | 抹茶/魚全般 |
case.III 広幡カイシャのあらすじ
恵まれた家系に生まれながら,過酷な境遇の末に屋敷を全焼させてしまったカイシャ。邏卒(現代の警察官にあたる存在)から追われる身となった彼は,<貴女>とともに花街の片隅で身を寄せるように暮らしていた。
美しい“藤の花”として扱われる<貴女>のことを,カイシャは「つぼみちゃん」と呼び,大切に育てている。水やりを欠かさない献身ぶりを見せる一方で,「愛おしくて妬ましい」と複雑な胸の内を漏らすこともあった。
ある日,いくら水を与えても元気が戻らない<貴女>を案じたカイシャは,“不老不死の薬を扱う薬売り”の噂を思い出す。<貴女>のためにその薬を手に入れようと動き出すのだが──?
愛と嫉妬が交錯する,新たな関係性
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しかし,やはりRejet作品。“愛と執着”が濃密に描かれる展開がこのあとに待っている。
自分が持っていないものをすべて備えている<貴女>に対し,カイシャの感情は“愛”と“嫉妬”のあいだで激しく揺れ動く。花の手入れになぞらえた彼の行動は,全3作の中でも予想を上回るものばかりだ。
「愛しているからこそ,僕と同じ場所まで堕ちてきてほしい」──その願いこそが,広幡カイシャという人物の核心を映しているように感じられた。
また,これまで“愛される”経験をほとんど持たなかったせいか,カイシャは随所で“孤独”そのものを深く恐れる姿を見せる。
一方で,邏卒に追われているという重大な事実に対しては「(捕まったら)そのときはそのときか」と淡々と口にする場面もあり,彼にとって最大の不安は“罰”よりも“ひとりになること”だというのが強く伝わってくる。
不老不死の薬を求める理由も,もしかすると彼自身にとっての“救い”を探し求める行為なのかもしれない。
さらに,広幡家が代々“和歌”を重んじる名家であることもあり,カイシャの言葉遣いにはどこか風流さが漂う。選び取られた一語一句が情景を生み,耳に届くたびに静かに心へ染み渡っていくはずだ。
被験結果:case.III 広幡カイシャ 各エンディングの考察
不老不死の薬を求めるカイシャは,謎の獣人 たふねから“ある問い”を投げかけられる。この瞬間を境に,物語は大きな転換点を迎えることになる。以下に,各エンディングの観察結果をまとめた(気になるエンドをクリックまたはタップして確認してほしい)。
先行被験者のコメント
ここからは前回同様,4Gamerスタッフおよび関係者による“聴取後の所感”をまとめて記録する。ネタバレには触れず,実際に聴いて抱いた率直な印象を記したもので,購入を検討している読者や,すでに予約済みの読者にとっても参考になるはずだ。
4Gamer 芥川
じっくりと締め上げるほど包み込んでくれた1人目の彼,意識が遠のくような激しさで振り回してくれた2人目の彼。
3人目の彼はどこまでも優しくて,何もかもを委ねてしまいたくなりました。
彼とならどこまでも,苦しくても悲しくてもそばで見守っていける。
何度壊れてもまた咲きましょう,醜い私(はな)でも愛でていただけるなら。
そんなことを想いながら,最後まで彼の声に溺れていました。
この世界の真相をどう受け止め,目を背けるか向き合うか,選択は自由です。
大事なのはきっと,自分が誰とどう生きたいかなのだと思います。
私は世界が敵に回ろうとも,彼だけを信じて生きましょう。そう誓いました。
彼の声を聞く皆様はどんな選択をするのか,とても楽しみで仕方がありません。
この報告(ラブレター)を書くのが最後になることが,正直寂しいです。
また新しい愛(はる)を手に迎えに来てくれることを待ち望みながら,この世界に溺れて孤独(ふゆ)を過ごします。
最後までたくさんの幸せをくださって,本当にありがとうございました。
4Gamer さがさん
case.I〜IIを聴いていたので,IIIでも穏便な展開にはならないだろうと覚悟して聴き始めました。
静かで落ち着いた雰囲気から始まりますが,どこか不安定な空気が続き,首が絞まるような思いで耳を傾ける場面もあります。カイシャの語り口はやわらかいのに,言っていることには違和感があり,そのズレがじわじわと不安を煽りました。
全体の空気を支えている音の使い方も印象的で,ドラマ中のBGMとして「病み星様(やみぼしさま)」が使われており,特にオルゴールバージョンが印象に残りました。ほかのバージョンも楽しめてよかったです。
エンディングはどれも切なく,聴き終わったあとにずーんと気持ちが沈みましたが,最後のキャストトークで少し救われて,思わずほっとしました(笑)。
4Gamer ばしょう
つぼみちゃんと言いながら貴女を可愛がるカイシャですが,やっていることは花を枯らす行為ばかりな気がします。水,あげすぎ。花だと思い込んでいるのに,やっている行為が矛盾していて,精神がかなり不安定なんでしょうね。
ほかの2人よりも狂気のなかに優しさを感じる部分がある気がしましたが……1つ以外の結末は救いがなく,なんとなく可哀想に感じました。
ステラワース スタッフ
今度は一体どんな雰囲気から始まるんだろう,何が起こるんだろう,好奇心が先行する心地で聞き始めました。
冒頭,あまりにも雅な世界観と音楽,そして広幡カイシャくんの語りにうっとり浸っていたところで豹変した言動に勢いよく「OVERNIGHTZ」の世界に引き戻されました。
そうです,私は花です。
カイシャくん視点で考えれば,作中の行動は相手にとって良いことをしようとしている・慮ってくれているのかもしれませんが,それが裏目に出ているようなときもあり……言葉選びが難しいですが不器用で可愛らしい男の人だな……というのが印象的です。
19歳……まだまだ大人になりきれていない駄々っ子のような……幼さすら感じるピュアな面も垣間見えて,ますますその一挙手一投足に惹きこまれました。
“もののあはれ”を解さない歌人といいますが,彼のことを表現できる言葉がきっとまだ存在していないのでしょう……。こんなにも心がカイシャくんに引っ張られているのに私も歌を詠めないことが悔やまれます。もう一度,何度でも,繰り返し聞きたくなる作品でした。
アニメイト渋谷M.K
「OVERNIGHTZ」case.IIに引き続き,case.IIIも視聴させていただきました…!!
今回は「花」になりました。(?)花なので,水やり(溺死しそうな勢い)も受けることができますし,スパダリ彼氏のような彼から甘〜い囁きが聞けます。
すみません……カイシャくん,めちゃくちゃ“癖”でした。甘々な束縛といった感じで依存性強めな印象を受けました。その一方で,彼は「花」で自身が父親から歌詠みとして認めてもらえなかったことの癒着をしているようにも感じました。「苦」よりも「切なさ」を強く感じる作品でした。
アニメイト鹿児島R.M
結末の中には,涙が零れ落ちてくるようなENDもあり,聴けば聴くほどのめり込んでいくようなすてきな内容でした。
「何でこうなってしまったのだろうか……」「何が彼をこんなことに……」「頼むから幸せになって……」と考え,願わずにはいられなかったです。
何が現実で幻想だったのでしょうか……彼がとても花のことを愛していることは確かなのですが…何度も視聴必須です。
私も戻れなくなってしまわないようにしなくては。
アニメイト梅田A.S
case.IIIも愛に狂っていて,聴き入ってしまいました。ルートによって狂気の矛先が異なり,愛する人の見え方・最後の結末も違って,ぜひ実際に聴いて狂気な愛を感じてほしいです。
愛するが故の狂気にドキッとする場面も多い所も魅力の1つです!
登場人物である「たふね」や「とお様」の異常なまでの【愛】に対する執着,狂った感情もこの「OVERNIGHTZ」の魅力のように感じました。
Rejet販売スタッフ
彼から感じる狂気的な雰囲気に圧倒されてしまいました。
見た目からは歌詠みだとは想像できなかったのですが,冒頭で「本当に歌詠みなんだな」と思える一幕があり,狂気的な彼から詠みあげられる歌に,ギャップをとても感じました。
どの瞬間を切り取っても「狂気」という言葉が出てきてしまうカイシャ,それもまたきっと彼の魅力なんだろうなと思います。冒頭から狂気的なカイシャと接してきたからか,少しの寂しさというか,心細さというか,そういう類のものが見えたときに,心つかまれるものがありました。
Rejet広報スタッフ
ついにやってきたcase.III!!!!
case.I〜IIと聴いてきた私はこの倒錯した世界にも慣れてきた今日このごろ……だったはずなのですが,今回も予測不能な展開にしっかり翻弄されました。
カイシャさんの歌を詠むように穏やかで艶やかな語りがとにかく癖になる……!
花として愛される,それはそれは丁寧に大切にしていただけるんですよね。もちろん人にしてはならないようなこともされるわけですが……それはもうお決まり,ということで。
「OVERNIGHTZ」に登場する人物は皆,何かしらの“問題”を抱えていますがカイシャさんの抱えているものもとても複雑で,辛いものでした。なんでいつもこんな辛い事実を突きつけられなければならないのでしょう……みんな救われて報われてほしい,そう願うばかりです。
そして今回はなんといっても,「OVERNIGHTZ」の世界の根幹に迫る内容も語られます。
まだまだ謎の多い「OVERNIGHTZ」の世界。
case.I〜IIIの物語本編のみならず,ブックレットの物語も合わせて読んでみると,また新たな見え方が楽しめるかと思います。
これまで3回にわたり作品を紹介してきたが,RejetのシチュエーションCDを久しぶりに聴いた筆者にとっても,そのクオリティの高さや表現の進化は明確に感じられる時間だった。全3作を完走した今だからこそ,特番レポート(関連記事)で鳥海さんが語っていた「(3作品を)とおしで聴いていただきたい」という言葉に強く共感する。
Rejet作品に触れたことがある人はもちろん,本記事で初めて知ったという人も,ぜひ「OVERNIGHTZ」を聴いて,“Rejetの真骨頂”を体感してみてはいかがだろうか。
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(C)Rejet
4Gamer 女子部(仮)








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