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[インタビュー]世界の音楽シーンに影響を及ぼすHYBEが,名前を変えてまでゲーム業界に挑戦する。HYBE IM改め「ドリムエイジ」は,どんな人が何を目指していく会社なのか
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印刷2025/08/25 12:00

インタビュー

[インタビュー]世界の音楽シーンに影響を及ぼすHYBEが,名前を変えてまでゲーム業界に挑戦する。HYBE IM改め「ドリムエイジ」は,どんな人が何を目指していく会社なのか

 「HYBE」と言えば,K-POPを代表する一社にして,超大手の韓国総合エンターテイメント企業だ。そのHYBEのゲーム事業部門として2022年4月に設立されたのが,「HYBE IM」である。
 HYBE IMは誰もが予想するように,HYBE関連アーティストの楽曲を使ったリズムゲーム「Rhythm Hive」iOS / Android)や,BTSのキャラクターと遊べるパズルゲーム「BTS Island:インザソム」iOS / Android)などをサービスインしてきた。

 親会社が持つ,強力なアーティストIPを使ったゲームを作るのは当然の流れなのだが,必然的にカジュアルな雰囲気のゲームが多く,4Gamer読者のような歯ごたえのある作品を求める人には,ちょっとマッチしなかったかもしれない。
 インタビュー中にも語られているが,日本では「そもそもHYBEがゲームをやってるなんて知らなかった」という認識が多く,そういう事情と「オリジナルIPを創出せねば」という社としてのミッションを達成すべく,社名変更に踏み切ったのは先日のことだ。

※韓国のゲーマーに聞いてみたら,韓国では「アーティストのカジュアルゲームばっかり出してる会社」という認識だったらしい。

当たり前ですが,「BTS Island:インザソム」公式サイトの会社ロゴもDRIMAGEに変更してある
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アーティストIPのゲームで知られるHYBE IM,社名を「DRIMAGE」(ドリムエイジ)に変更。今後はオリジナルIPの発掘や創出にも注力

アーティストIPのゲームで知られるHYBE IM,社名を「DRIMAGE」(ドリムエイジ)に変更。今後はオリジナルIPの発掘や創出にも注力

 HYBE IMおよびHYBE IM JAPANは本日,社名を「DRIMAGE」(ドリムエイジ)および「DRIMAGE JAPAN」(ドリムエイジ ジャパン)に変更することを発表した。今後のミッションとして,「新たなオリジナルIPの発掘・創出・船出・育成・拡張」を掲げている。

[2025/07/03 10:00]

 発表会では,コアなゲームもどんどんやります,といった雰囲気を出していたが,そうはいってもそこまでの積み重ねはカジュアルゲームがメインだったわけで,どういう人が,どういう心持ちで,このあと何をしていくのだろうか。
 2025年7月に新社名「ドリムエイジ」(DRIMAGE)になってから,いつか大きな動きが見えたときにお話してみたいと思っていたが,7月半ばに京都で開催されていたBitSummitの会場で,日本法人の社長中西氏が,見覚えのない誰かとウロウロしているのを発見。声をかけてみたら,一緒にいるのは韓国の本家ドリムエイジの社長とのことで,無理を言ってちょっとだけ時間をもらうことができた。
 灼熱の京都で小1時間ほど話した内容を,以下にお伝えしよう。

4Gamer「BitSummit the 13th」まとめページ


※古い人だと「ドリマガ」と読んでしまいそうになるスペリング。ちなみに筆者は初見で「Dream+Mage」なのかなと(夢を魔法で作る的な)思っていたが,「Dream+IM(Interactive Media)+Age」だった。まさか4つも単語が入っていたとは

DRIMAGE 代表取締役社長 チョン・ウヨン氏(左)
DRIMAGE JAPANの代表取締役社長 中西啓太氏(右)
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 最近はずいぶんそういうことも減ってきたが,「ゲームが本業じゃない会社」がゲームに参入するときは,よくゲームを知らない人を配置してしまって,事業そのものがうまくドライブできないことはよくあることだったし,正直なところHYBEも(ドリムエイジに対して)そうなんじゃないかなと思っていたことは否定しない。
 しかしドリムエイジの場合は,韓国の社長も,日本の社長も,なかなかのゲーマーで業界歴も長い。この2人がタッグを組んで,コアな方向に寄せつつゲーム事業を推進するなら,この先がちょっと楽しみかもしれない。

4Gamer:
 お忙しい中,お時間とっていただき,ありがとうございます。中西さんと並んで歩いてるのを見て,ついお声がけしてしまいましたが,まさか本国から代表が来ているとは思いませんでした。

チョン氏:
 いやいや大丈夫ですよ(笑)。こちらこそ見つけてくれてありがとうございます。

4Gamer:
 初日の午後に,こうやって僕が捕まえてしまっていきなりお時間取らせているのに聞くなよという感じですが,会場はすでにご覧になりました?

チョン氏:
 ええ,午前中に回りましたよ。

4Gamer:
 何かよさそうなタイトルはありましたか?

チョン氏:
 いやもう,たくさんありましたね。実はまだ3階は見られてないんですが,そちらにも良いタイトルが多いと聞いて,わくわくしています。このインタビューが終わったらすぐ回ってみるつもりです。

4Gamer:
 中西さんはさっき(初日午前中に)何度か会場で見かけましたけど,日本側代表として,良さそうなものは見つかりましたか。

中西氏:
 声で敵を倒すゲームとか試してみたんですけど,結構斬新だなと思いました。引き続き午後もいろいろ見ていきたいと思っています。

4Gamer:
 そういう「ちょっと普通じゃない」タイトルにも興味を持たれるということは,ドリムエイジとしてはそういうのもパブリッシュの範疇に入っている?

中西氏:
 そうですね。まぁ完全に私の好みですけど(笑)。
 今後はやっぱりIPを作っていくとか育てていくというところに注力していきたいと思ってまして,そういう話になると,何か突出した,目を引くものが必要だなと思いまして。それでちょっと変わったものも探ってみようと思って試遊してました。

4Gamer:
 BitSummitなら,かなり変なものも集まる場所なので,探すには絶好ですね(笑)。


真のライフスタイル企業に移行するためには,ゲームなしには語れない


4Gamer:
 まずやはりここからの質問なんですが,社名を変更した本当の理由は何でしょうか。

音楽レーベルのオーナーではなく,LoLとWoWのコアゲーマーであるチョン氏
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チョン氏:
 あまりにも違うし,まぁ聞かれますよね(笑)。
 前の社名である「HYBE IM」のIMは,インタラクティブメディアを意味する文字です。HYBEという会社がゲーム事業に参入したときに,「我々はゲームをインタラクティブメディアとして見ている」というメッセージを込めたのです。

4Gamer:
 なるほど。確かに音楽は「インタラクティブ」なメディアではないですね。

チョン氏:
 そして会社の設立から3年ぐらいたった今,インタラクティブメディアというフォーマットに留まらずに,その枠に何を入れて,何を皆さんにお見せしたいのか,そして我々がどんな役割を担いたいのかに関して,もう少し社名を通じて語りたかったので,社名を変えることになりました。

4Gamer:
 HYBEという名前が持つ,良くも悪くも強いイメージを払拭したい……というわけではなく?

チョン氏:
 HYBEは音楽シーンで有名な会社なので,確かにその名前が与える影響は大きいです。
 そこから得られる信頼感や安定感を考えると,名前変更は正直惜しいな……という気持ちもあったことも否定しません。でも,我々がどこを目指すのかを明確に宣言するのがもっと大事だと考えました。

4Gamer:
 この社名変更を提案したのはチョンさんですか?

チョン氏:
 そうですよ。

4Gamer:
 日本法人的には,この新しい名前はどうですか?

中西氏:
 社名変更自体は,私も賛成です。

4Gamer:
 「自体は」というのは,若干含みがある表現ですが。

中西氏:
 なんていうか,やっぱり「HYBE」がゲーム事業に進出しているということは日本ではあまり知られていないんです。
 特に人材採用周りでその影響を受けてまして,ゲーム業界の経験がある方には「HYBE」というワードが引っかかるケースが少なくて,そういう意味では「HYBE」という名前の強みはあるものの,日本でその影響力を有効活用する方向を模索するよりも「ゲームをこれから本気でやっていく」という感じで,「DRIMAGE」という名前をもっと前に出した方がいいかな,と思っています。

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4Gamer:
 あぁ……なるほど。「HYBE」のブランドがゲーム業界において超強いのかと聞かれると,確かにちょっと疑問は残ります。あとやはりなんか「片手間でやってる感」が出てしまう可能性も否定できないと思います。
 しかしチョンさんは,2003年のNEXONからキャリアをスタートして,もうゲーム業界で20年以上やってらっしゃるわけですが,チョンさんが個人的に考える「良いゲーム」とはどんなものですか? そしてドリムエイジはそれを目指していくんでしょうか。

チョン氏:
 これは,社名の話ともつながる部分だと思います。
 良いゲームとか,何かが足りないゲームとか,そういうものがあるとは思っていないんですが,自分が20年間ゲームの仕事をしながら思っているのは「ゲームは私たちの夢に触れる手段になれる」ということです。

4Gamer:
 確かに社名には「Dream」が入っていますが,夢に触れるとはどういう意味でしょう。

チョン氏:
 ゲームはもちろんまず楽しさを得ることもできますが,例えば人生で感じた様々な感情や想像していた夢など,そういうものにもゲームを通じて間接的に触れられると思います。そしてその過程で,例えば色んなことに疲れた人々が癒されたりするのなら,そういうゲームが業界全体の領域を拡張できると信じています。
 だから,ただ単に楽しさだけを与えるのにとどまらず,私たちが夢に触れられる「インタラクティブメディアアート」としてのゲームを作りたいし,サービスしたいのです。

4Gamer:
 そこまではっきりした信念を持った人が,なぜ大手ゲームメーカーから総合エンタメ企業に? やはり餅は餅屋だし,ゲーム会社にいたほうがいろいろやりやすいことも多いのではないでしょうか。

チョン氏:
 私はちょっと違う考えでして,HYBEというエンタメ企業が自分の信念を貫くにはもってこいなところだと思いました。
 入社時に,HYBEの創業者であるバンさんとお話させてもらったんですが,そのときに言われたのが「HYBEが目指すのは最高の音楽会社ではなく,グローバルNo.1エンターテイメントライフスタイルプラットフォーム企業である」とのことです。

4Gamer:
 エンターテイメントライフスタイル。なるほど。

チョン氏:
 エンターテイメントライフスタイルという話で言うなら,我々の周りのすべてのエンターテイメントがそれに該当するとも言えます。もちろん音楽もその一部で,音楽を超えたほかのエンターテイメント要素があると,HYBEとしては考えているわけです。

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4Gamer:
 音楽以外のエンターテイメントも必要である,と。

チョン氏:
 ええ。音楽以外の部分を補って,真のライフスタイル企業に移行するためには,ゲームなしではこの勝負に勝てる力はつかないと昔から考えていた,とバンさんが話してくれました。
 ゲームを,我々の夢や様々な感情に触れられる手段として拡張したい自分と,HYBEのニーズがマッチして,むしろ強いバックアップを得られる組み合わせだと思ったんです。

4Gamer:
 なるほど。そういう話でしたら,HYBEもゲーム事業に関して割とちゃんと理解があって見守ってくれている感じですか?

チョン氏:
 もちろんです。手厚くサポートされていると,私と中西さんは感じています。

4Gamer:
 ゲームというコンテンツは,まぁ「ほとんどが当たらない」わけですが,HYBEもそういう部分は理解してくれているということですね。

チョン氏:
 そうですね。我々のゲームに対して親会社のHYBEは音楽であるという違いはありますが,同じようにすべてのコンテンツがヒットするのは難しい産業なので,その点,ほかの業界の方々より理解が深くてありがたいです。

4Gamer:
 ドリムエイジの独自性とか自律性はどこまで許容されてるんですか?

チョン氏:
 その点においては,我々が完全に自分で判断して意思決定ができる構造です。

4Gamer:
 なんと。それは結構すごいですね。
 音楽とゲームという違いこそあれ同じエンタメ企業ではありますが,文化的な差とかビジネスの優位性とか,そういう部分で問題があったりプレッシャーを感じたりするシーンもないんでしょうか。

チョン氏:
 これが本当に全然ないんですよ……。
 確かに,今おっしゃったようなことは,とてもよくある話ではありますが,そうならないために,HYBEは別法人を設立したわけです。

4Gamer:
 まぁそうなんですけど,普通はかなり口挟んでくるものですし。

チョン氏:
 ええ,もし我々がHYBE社内のゲーム事業部として事業を続けていたら,おっしゃったようなことは発生しやすかったでしょうね。ですが,法人と資本を分離し,それぞれが置かれた状況下でそれぞれの目標を目指して最善を尽くすような構造を最初から作ろうとしたのが,ドリムエイジのスタートラインでした。
 ですので,おっしゃったような問題は,実際問題まったく発生していないんです。

4Gamer:
 それは恐れ入りました……。普通はそこまではできないものなので。
 では親会社であるHYBEとして,ドリムエイジのゲーム事業に対して,何を期待してどんな最終目標を描いているんでしょう?

チョン氏:
 HYBEが目指してるのは,さっき言ったようにエンターテイメントライフスタイルプラットフォームになることです。その過程でドリムエイジがゲーム領域において存在感を増すことを期待しています。
 ある意味では,エンターテイメントライフスタイルプラットフォームという最終目標に向けて,HYBEは音楽から,ドリムエイジはゲームから出発して,それぞれのレースをまさにいま頑張っている最中だと言えますね。

HYBE関連アーティストのゲーム以外も結構ある。直近では,「OZ Re:write」(オズリライト,iOS / Android)の正式サービスが,8月19日から始まっている
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4Gamer:
 やはりHYBEという親会社がいる以上,アーティストIPとのシナジーを強く求められてるのではないかな,とちょっと思ってました。もしそうであれば,必然的に行動に制約が出てしまって,やりたいことがあってもアーティスト優先になっちゃいますよね。
 そうなると最終的にはゲーム事業としてなかなか進めづらい方向になっちゃいますけど,つまりそういうことはなさそう……なんですよね?

チョン氏:
 良い指摘です。その点に関してはHYBEもよく理解していますし,HYBE自らが警戒している部分でもありますね。

4Gamer:
 この先出てくるドリムエイジのタイトルを見ても,「こんなにコアなゲームばかりで大丈夫なのかな?」という心配が逆にあったりもしますが(笑)。

チョン氏:
 それはきっと中西さんの趣味です(笑)。
 あとたぶんですが,アーティストとのコラボゲームばかり作りたいのだったら,別法人にはしなかったと思います。

4Gamer:
 それは確かにそうですね。

チョン氏:
 もちろんHYBEのメンバーとして必要とあれば,ドリムエイジの発展のためでもありますし,積極的に検討はします。しかし良いコンテンツをもって本格的にゲーム市場に入るためには,音楽関係だけに限らず,ゲームに夢や色んな感情を込めるために努力するつもりです。

4Gamer:
 それはスタッフの間でも共有されている?

中西氏:
 もちろんアーティスト好きな人も社内にはいますが,根本的な部分でゲーム好きな人,コアゲームが好きな人……割とそういう人達で構成されていると感じています。

4Gamer:
 なるほど,だからああいうラインアップなんですね。もうなんか割とガチな。あれは最終的に誰が決めているんですか?

中西氏:
 例えば「Project Torch」とかに関しては,実際何回かテストプレイをしていて,開発会社に本国側と一緒に出張に行って,お互いに意見が一致して契約できるように進めることになりました。
 結構日本側の意見も聞いてもらっていて,「日本としてこれどう思う?」というのを常に気にかけてもらっている状況で,日本と韓国で話し合った上で決めています。

※正式名称が「Arkheron(アーケロン)」になると8月8日付けで発表した(関連記事
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韓国の会社が日本市場を理解するために,どんなに工夫や努力を重ねても,それには限界があります


4Gamer:
 なるほど。
 ……ところでチョンさんって,結構ゲーマーなんですか? パッと見はなんかアートとかやってそうで,あんまりゲームをする感じには見えないので……。

中西氏:
 日本法人内でも言われてますよ(笑)。ゲーム業界出身というよりも,なんか音楽業界出身っていう雰囲気だよねーって。

4Gamer:
 なんか個人で音楽レーベルとか持ってそうですよね。

チョン氏:
 いやいや,もちろんゲーム大好きですよ!

4Gamer:
 今までで一番時間を使ったゲームって何ですか?

チョン氏:
 こんな時はノータイムで「ドリムエイジが初めて開発してサービスした『BTS Island:インザソム』です」と答えるべきなんですが,まぁゲームメディアに対して答える内容ではないですよね(笑)。
 個人的には実はそれなりに古いゲーマーでして「World of Warcraft」にかなりの時間を使いましたし,「リーグ・オブ・レジェンド」にもずいぶんハマっていました。

画像ギャラリー No.009のサムネイル画像 / [インタビュー]世界の音楽シーンに影響を及ぼすHYBEが,名前を変えてまでゲーム業界に挑戦する。HYBE IM改め「ドリムエイジ」は,どんな人が何を目指していく会社なのか

4Gamer:
 おお,オンライン系もばっちりですね。

チョン氏:
 皆さんに比べたらまだまだですけど,よくプレイしましたし,好きなジャンルです。

4Gamer:
 なんでそんなことを急に聞いてるかというと,ゲームについてどれくらい前から触れているのかなと思いまして……。失礼ながら,うん,全然ゲーマーっぽさがなかったので(笑)。
 しかしゲーマーであることは理解できましたし,会話の端々から日本市場に積極的な印象があります。そもそも京都のインディーイベントにまで視察に来るくらいですし。

チョン氏:
 こんなに暑いとは思わなかったです!

4Gamer:
 真夏の京都ですしね(笑)。
 しかしご存じのように,日本のゲームマーケットは世界の中でも比較的特殊な部類だと思います。日本における戦略的なポイントや注力するポイントって何だとお考えですか?

チョン氏:
 まさにそれこそがドリムエイジ ジャパンの存在理由ですね。
 ゲーム業界における日本の役割や比重はとても重要だと思っています。でも韓国の会社が日本市場を理解するために,どんなに工夫や努力を重ねても,それには限界があるとも思っています。
 なので,我々が日本市場でゲーム事業を展開するためには,ゲームを愛する日本のゲーマーや開発者,ゲーム事業の人が集まってみんなで力を合わせる必要があって,そうしてはじめて真実に近い答えを見つけ出せると思っています。

4Gamer:
 なので韓国ドリムエイジが直接やるのではなく,ドリムエイジ ジャパンを作ったのだ,と。

チョン氏:
 ええ。第一歩としてドリムエイジ ジャパンを立てて,一緒に成長していこうとするところです。
 ……日本マーケットがとても大事なので,HYBE IM時代,まだ社員が50人にもならない時点で,中西さんを呼んで日本マーケットへのアプローチ方法を一緒に考えようと話した思い出が今浮かんできました。

4Gamer:
 例えば外国の会社が日本国内で事業を立ち上げる時,日本の人をトップに置かないというのは国を問わずよくあることですよね。でもドリムエイジは,そこを割り切って中西さんに丸投げしてるのが,ある意味すごいな,と思いました。
 任されている側としては,どんな気分なんでしょうか。

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中西氏:
 責任感はもちろんですが,プレッシャーもありますね。
 でもグローバルでやっている以上,国によって方針だったり施策だったりを変えることがあります。そういうときに韓国本社として「こういう方向性でやっていこう」と話があったときに,「日本はこういう市場だから」というところを話せる必要があって,そこを説明できるのは現地にいる人間だと思うんです。

4Gamer:
 逆も真なりで,僕らが韓国の会社のトップになるのもやはり難しいと思うんですよね。

中西氏:
 そうですね。
 我々も,もし私の上に韓国の方がいたら,そこの部分の伝わりにくさがどうしても出てしまうんですが,信頼していただきながら「日本はこうです」といつもコミュニケーションとっています。

チョン氏:
 その件についてちょっとだけ補足してもいいですか?

4Gamer:
 ぜひお願いします。

チョン氏:
 日本のことを単に「1つのゲーム市場」として見ることについては,ちょっと慎重にしたいです。なので私は「ゲーム生態系」という言葉を使っています。

4Gamer:
 単なる市場以上の価値が?

チョン氏:
 日本は,ゲーム業界においてとても重要なポジションにいると思います。もちろんマーケットとしての日本は,とても魅力的です。でもゲーム業界の人間として,日本はマーケット以上の存在なのです。
 ある意味,ゲーム業界の「首都」のような役割を担っていると思います。クリエイティビティや多様性が息づいているんです。

4Gamer:
 そのマーケット以上の存在である日本でうまくやるために,どういう部分に気をつけていますか。

チョン氏:
 ドリムエイジの韓国本社とドリムエイジ ジャパンは,本社と海外法人という建て付けではなくて,パートナーとして……一番重要な地域の一つである日本の事業を担当する同等なメンバーとして,ともに成長したいと思っています。
 韓国の人員を投入するよりは,現地(日本)の人がこの会社を作り,会社とメンバーがともに成長することができ,そしてドリムエイジ ジャパンが日本のゲーム生態系の中で1人前になることを望んでいます。

4Gamer:
 お褒めいただいてとても嬉しいのですが,最近の日本のゲーム市場にも同じような感想を抱いていますか? オリジナリティであったり,競争力であったり,中にいると,そういうものが全体的にちょっと欠けているようにも思っていまして。ナンバリングの続編とリメイクばかりが出てきますし。
 そういう部分が,韓国から見てどう見えてるのかはちょっと気になります。

チョン氏:
 日本に限らず,ゲーム大国はみんな良い時期もよくない時期もあると思います。私は外国人として,そしてゲームを愛する人として,外から見ていると,日本のゲーム業界の変わらない価値のようなものが見える気がします。

4Gamer:
 「変わらない価値」がどんな部分なのかを具体的に聞いてもいいですか?

チョン氏:
 日本の人としては,昔に比べたらクリエイティビティや多様性が弱くなっていると感じるかもしれないんですけど,外から見ると,それでもなお日本のゲームは物語の種類も多様ですし,ナラティブや演出においてもより独創的な試みが多い感じがします。
 それこそが日本のゲーム生態系の底力だと思いますし,海外から見てとても羨ましいことでもあります。

4Gamer:
 日本法人的にはどう思いますか。

中西氏:
 おっしゃった内容は理解できますし,やっぱり昔のファミコンやスーファミ,プレステなどの名作ゲームで育った世代としては,ナンバリングやリメイクが多くなってきているな,とは感じています。
 でもそれが悪いという話ではないです。リメイクではありますが新しい要素を入れたりしている作品も多いですし,そういう作品は新しいプレイヤーを獲得することにも成功しているように見えます。

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4Gamer:
 もちろんリメイクが悪だというつもりはありませんが,そればかりなのもなぁ……と。

中西氏:
 海外の開発スタジオの開発スピードや進化が速かったりするので,焦りとかそういうものが出ているのかもしれないな,となんとなく思ってはいます。でもやっぱり日本人としては,忍耐力だったり職人気質だったり,今後もそういうところに期待していきたいですね。

4Gamer:
 おっしゃってることは逆のパターンもちょっと思っていて,韓国のゲーム業界が以前より元気になりつつあるなというのが個人的な意見なんですけど,そこについてはどう思っていますか?

チョン氏:
 それに関しては私は韓国人なのでちょっと慎重に答えますが,おっしゃったように韓国のゲーム市場もマクロ的には前に進み続けていると思います。韓国はPCオンラインゲームをメインに成長して,その後はモバイルゲームに移行して少しずつその規模を拡張してきました。

4Gamer:
 昨今はモバイルからの脱却も目立ちますね。

チョン氏:
 そういう面も含め,私は規模とかよりは,韓国のゲーム市場の多様性に興味を持っています。
 確かに,以前に比べると色んなプラットフォームで,より多様なジャンル,そして多様なストーリーを持っているゲームが少しずつリリースされていますし,韓国市場だけではなくもっと広いグローバルオーディエンスをターゲットにしたゲームもどんどん出ていると思います。
 韓国のゲーム業界も,進歩が遅いときだってあるとは思いますが,少しずつちゃんと前へ進んでいると思っています。

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BitSummitでも,一風変わった韓国ゲームが結構多く見られた
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 京都のみやこめっせで開催されたインディーゲームイベント「BitSummit the 13th」では,KOCCAによる「KOREA INDIEGAME SHOWCASE in BITSUMMIT 2025」ブースが出展されていた。6タイトルをまとめて紹介しよう。

[2025/07/21 14:22]


ユーザーの意見を聞くときには,意見そのものではなくて,その意見をするに至った「理由」が大事


4Gamer:
 韓国も日本も,というより世界各国のゲームは,もはやグローバルにローンチしないと生き残るのが厳しい状況だと思うんですが,まぁそうはいっても昔よりは遥かに簡単にグローバルにローンチできるわけです。
 そんな,グローバルに向けて動かねばならない時代に,ゲーム会社はこの後何に注力してどこに注意すべきなのかについて,どのように考えていますか?

チョン氏:
 自分的には,面白くない答えになっちゃいますが,ユーザーコミュニケーションが一番大事だと思っています。おっしゃるようにグローバルローンチがとても容易な環境になりましたが,それはプラットフォーム的に容易になったというだけのことです。

4Gamer:
 確かにそうですね。

チョン氏:
 例えば今のドリムエイジの場合,韓国チームと日本チームがあるわけですが,ほかにも色んな国に,弊社のゲームに愛情を持ってくれる可能性があるゲーマーがいます。そんな彼らに,過去の手法でマーケティングを実施して効果的にゲームを知らせるのは,以前と相変わらず難しいことだと思います。
 そんな環境の中で,グローバルオーディエンスに効果的にアプローチするためには,昔より早い段階でユーザーとのコミュニケーションを始めるのが必要だと思っています。

4Gamer:
 それは直接的なコミュニケーションについて話していますか?

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チョン氏:
 そう……いうわけでもないですね。
 今時のゲーマーは,生まれた時からもうインターネットがあった世代なので,ネットで自分の意見を述べることに対して,過去の世代よりはるかに慣れている世代だと思います。なので早い段階で,私たちが作っているゲームに対するユーザーの意見を拾おうと努力すれば,一緒にゲームを作っていく主体になれると思います。
 そうやってプラットフォームを通じて,早い段階からユーザーとコミュニケーションを取ることが,グローバル市場でユーザーを獲得する方法ではないかと考えています。

4Gamer:
 その「一般ユーザーの意見」はどこまで重視するんでしょう。

チョン氏:
 全部が一番大事だと思っていますよ。でも,質問の意図はなんとなく分かるので,たぶんそういうことだろうと思ってお答えしますね。
 コミュニティでユーザーの意見を聞くときは,意見そのものよりは,その意見をするに至った「理由」に注目すべきです。それが我々プロがやるべきことです。
 もちろん私たちなりに解釈して反映させますし,それが私たちの役割です。しかし,反映されていない意見だからといってそれが大事ではないということではありません。それらも含めて,すべての意見は大事なのです。

4Gamer:
 いや,ずいぶん理想的な答えが返ってきましたね。

チョン氏:
 ということはイマイチ面白くない回答だったかもしれませんね,ごめんなさい(笑)。

4Gamer:
 同じように長く業界にいる中西さんは,そのあたりについて何かお考えはありますか?

中西氏:
 これは,すべてのゲームに当てはまるのかどうかは分かりませんが,ゲームというものが「一つの国」のように感じることが多いんです。

4Gamer:
 国,ですか。

中西氏:
 運営している会社が国をまとめていく存在だとすれば,市民であるユーザーの皆さんは「こうしてほしい」「ああしてほしい」とさまざまな意見を届けてくださいます。その中で,どんなことが最も求められているのかを見極めるのは,とても重要です。
 印象的な声もあれば,多くの方に共通する声もあります。運営としては,その一つひとつを大切に受け止め,丁寧に精査していくことを常に意識しています。

4Gamer:
 ……もう1時間ほどが経ってしまいました。初日の貴重な時間をこれ以上いただくわけにもいかないので,最後に1つだけ。
 名前を変えての再出発みたいな感じではありますが,このあと,一般ユーザーや業界の中に対して,ドリムエイジの本気度みたいなものを,どうやって示していきますか?

チョン氏:
 製品とサービスで示すのが一番良いと思いますし,4Gamerのようなメディアが私たちの話を聞いてくれただけでも,大きい声援を受けたような気がします。

4Gamer:
 恐縮です……。

チョン氏:
 私たちがこれからやるべきことは,今日話したような「絵に描いたようなカッコいい言葉」を,実際のサービスで実現することですね。
 それで,日本でドリムエイジのタイトルを披露したときに「このタイトルは日本市場やユーザーを理解しようとしたんだ」と,一人でも多くの人に分かっていただけるように頑張るのが私たちのやることだと,今日インタビューをしながら決意を新たにしました。

中西氏:
 「あのときのインタビューは嘘じゃなかった」「話してた内容をちゃんとやろうとしているなー」と言われるように,見守っていただきながら表現していきたいと思ってます。

4Gamer:
 ありがとうございました。

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――2025年7月18日収録 
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