
インタビュー
[インタビュー]GhM完全新作「ROMEO IS A DEAD MAN」はなんなのか。須田剛一氏&山﨑 廉氏が語る,制限から生まれた原点回帰の混沌と熱狂
「帰れる所があるんだ」と実感できる。ゲームイベントでファンと交流するということ
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4Gamer:
かつてのプロレスゲーム制作秘話とリック・フレアーの話で落ち着いたところで,ここからは開発期間中の話をお聞きしたいと思います。
須田さんはこの3年くらいで,GhMの25周年や「シャドウ・オブ・ザ・ダムド: ヘラリマスタード」,「ホテル・バルセロナ」などで数多くのイベントに参加されていました。
先日は審査員としてU-22世代のインディーゲームクリエイターを応援する「IND-1」にも参加されていましたが,そういった国内外のリアルイベントでのファンやクリエイターとの交流は,ご自身にとってどうのようなものなのだろうと。
ゲーム業界の金の卵,日本の宝が鎬を削るIND-1,素敵で素晴らしいコンテストでした。審査員で参加出来た事が,光栄です。
— SUDA51/須田剛一 (@suda_51) July 20, 2025
BitSummitより(行ってないけど…) 熱かった! #IND1 https://t.co/rtzL8W4ag9
須田氏:
やっぱり,すごく大事ですね。ファンの皆さんに喜んでもらえているという実感があって。
握手したりとか,写真撮ったりとかするじゃないですか。コスプレをして来てくれる人もいて。握手をしてその手を握ると,「本当にゲームが好きなんだ」「僕たちの作品が好きなんだ」って熱や気持ちが伝わってくる。
なんというか,「帰ってきたんだな」って感じがあるんです。
4Gamer:
最近だとMomoCon 2025がありましたね。
BitSummitでSWERYさんにお会いしたとき(関連記事),須田さんと参加したMomoConが印象的だったと話していて。
須田氏:
そうですね。大きいイベントではあるんですが,有志の学生さんたちでスタートしたMomoConのルーツにある手作りの精神みたいなのが今もちゃんとあって。ゲストのクリエイターとお客さんが近いからこそ,その距離の取り方も丁寧なんですよ。
MomoConは2年連続で参加したんですが,ふつう2年目ってサイン会の参加者って減るものだと思うんです。でも今年は去年より倍くらいは増えていて,列を切らなくちゃいけないくらいになっていました。
4Gamer:
集まった人たちはどんな印象でしたか? 昔からのGhMや須田さんのゲームが好きな人だけではなく,新しいファンも増えているのかなと。
須田氏:
若い人が増えているのは感じましたね。本当にありがたいです。
Steamで昔のゲームを遊んでくれているのが大きいのかなと思います。「『シルバー事件』を遊びました!」って言ってくれる若いゲームファンの人も多かったですし。
thank you MoMocon! pic.twitter.com/uhmNcibRaX— SUDA51/須田剛一 (@suda_51) May 24, 2025
4Gamer:
Steamのようなプラットフォームがあって,今は世代の線引きなく誰でもフラットに触れられる時代ですよね。
音楽でいえば,“出会ったときがその人の新譜”みたいな。サブスクで入って,そこから音源やライブへとたどっていけるという。
須田氏:
そうですね。懐かしいゲームではなく,彼らにとっては今の自分たちのゲームで。そう捉えてもらえるのはいいですよね。
ゲームを作っていて,自分たちの作品もそういうものとしてありたいというのは理想としてあります。
それもあってゲームイベントでいろいろな世代のゲームファンに会える機会は本当に大事ですし,そこで僕たちのゲームをプレイしていると声をかけられることは本当に嬉しいです。
4Gamer:
また話がプロレスに戻ってしまいますが,若いゲームファンというと,アメリカのプロレス団体・AEW所属のMxM Collectionのふたりがスタジオにきて交流していましたね。
須田氏:
ああ,彼らなんかまさにですね(笑)。
マンスールが僕たちのゲームのファンで,「killer7」のTEXAS BRONCO(テキサス・ブロンコ)のTシャツを着ているSNSの投稿をファンが共有してくれて,DMでやり取りをしたのが最初でした。
それで,日本にくることがあったらスタジオに遊びにきてねって伝えていて。
4Gamer:
後楽園ホールから歩いてすぐだから! って。
須田氏:
まさにその感じで(笑)。それでスタジオに遊びに来てくれたんですが,もうひとりのメイソン・マッデンもすごいオタクなんですよ。
ジークアクスのこの■■■のフィギュアを見て,「■■■■の■■だよね!」って(※ジークアクスのネタバレ回避のため伏字です)。
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4Gamer:
「ジークアクスに出てるキャラクターだよね」ではなく,さらに踏み込んだ話を。
世代は関係なく,同じものが好きな人でつながって話せるのはいいですね。
須田氏:
ええ。そういうものが本当に好きな人たちでしたね。
それで「このあと五反田で試合だから」ってばーっと行っちゃって。面白い人たちで,会えてよかったですよ。
MxM Collection came to hang out!
— SUDA51/須田剛一 (@suda_51) July 3, 2025
Both @suavemansoor and @GREATBLACKOTAKU were actual, real-life otaku! pic.twitter.com/lQkBTMlE05
4Gamer:
日本を楽しみながら,いろいろな団体に参戦して会場を盛り上げていったという。なんかエネルギーがもらえそうなふたりですね。
こうして国内外でイベントに参加したりいろいろな人と会ったりされて忙しそうですが,いつシナリオを書いていたんだろうというのが気になります。
あと映画もですね。須田さんの趣味であり,イマジネーションの源のひとつでもあると思うんですが,さらに昨年「キネマ51」(再生リストのリンク)も復活して。
はたしてこの忙しい中でどう映画を観ているのだろうと。
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4Gamerの連載「キネマ51」一覧ページ
須田氏:
実はどちらも,海外出張があるとことで,はかどるものだったりするんですよ。
映画だと,iPadにダウンロードしておいたり,国際便の機内エンタメがたくさんチェックするチャンスですね。途中で寝落ちしちゃってまたアタマから観て,結局また最初と同じとこでまた寝落ちしてみたいなのを繰り返しながらいろいろ観ています。
4Gamer:
ああ,分かります。私も海外行きの飛行機では,可能なかぎりのお酒をもらって,可能なかぎり映画を観る……というのが目標にあって。
見逃していた作品とか日本で公開されていないものとか,あと昔好きだった作品を見つけて,それが自分を見つめ直すことになったりもしますね。
須田氏:
そうですね。あの時間めちゃくちゃ大事です。
シナリオ作業は,イベントで滞在しているホテルで「けっこう時間あるな」って感じでいっぺんに進むこともよくあるんですよ。
4Gamer:
環境が変わったこととか,現地で新しい刺激を得たこととかが影響して……みたいな。
須田氏:
ええ,そういう感じもありますね。それで締め切りを引き延ばしていたものを一気に片付けて,みたいな(笑)。去年,アブダビでのイベントにお呼ばれして行ったときは,空き時間がけっこうあったのでシナリオがフィニッシュできましたね。
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開発途中で発生した“制限”が,GhMらしさのあるゲームと開発スタイルを思い出させてくれた
4Gamer:
と,お話しをうかがっているうちにだいぶ時間が過ぎていました。
このように楽しい感じでいろいろお話ししていただけましたが,会社が新しい体制となっての完全新作を作るって大変だったこともあったのではないでしょうか。振り返ってみてどうでしたか? と,最後にそのあたりをお聞きできればと思います。
須田氏:
そうですね。大変だったことはいろいろあるんですけども……ひとつは開発すぐのときにあった,ゲームのスケール感をどうするかという話ですね。
ジオラマを見てもらったと思うんですけど,当初はあの世界で小規模ではありますが町一個分をオープンフィールドでゲームを作ろうと思っていたんです。ただそれはできなくはないけど,やるにはグラフィックスの質を落とさなければ難しいと。
今回はAAAに近いリッチなものを目指していたので,グラフィックスを取ろうと。けっこう初期の段階で,大ナタ振るうじゃないですけど,だいぶ大きな組み替えは発生しましたね。
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4Gamer:
あのジオラマはすごいですね。これを使ってイベントの発生する場所や物語を組み立てたとか。
須田氏:
そうですね。ゲーム自体はオープンフィールド的なものにはなりませんでしたが,リニア式になったというだけで,ゲームの舞台はこのジオラマの町がベースにあります。
なので,ストーリーにもいろいろなスポットが登場します。でもけっきょく,宇宙に旅立ったりはするんですけど(笑)。
4Gamer:
ああ,たしかに(笑)。
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須田氏:
あとは……これは1年くらい前ですが,当初予定していたものを全部見直したことが一番大きかったですね。
いくつか当初計画から変更をする必要が出てしまい,取り掛かる予定だった要素のシュリンクをしなければならなくなって。
4Gamer:
えっ。全部ですか……。
山﨑氏:
ストーリーやアクションの基本のところは変えられないので,そのほかの要素や演出ですね。ぜんぶを見て,詰めるところはいったん詰める。そして,詰めた部分をいかにチープにならないようにするか考えながら作り直す。これは大変でしたね。
須田氏:
でもこれ,ただマイナスだったかといったらそうではないんですよ。
例えばイベントシーンですが,マンガを読み進めるような見せかたになっていますよね。あれって実はこの見直しで生まれた演出なんですよ。
4Gamer:
え,そうなんですか? まったく違和感がありませんでした。
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須田氏:
本来はイベントシーンもすべてリアルタイムカットシーンで作るつもりだったんです。
でもリアルタイムで動かすって,それだけでかなりのコストになるんです。つまり,コストを大きく削れる部分でもあるわけで,ほかに面白い見せかたがあれば,ゲームの魅力を損なうことなく進められる。
それで,うちには能丸(コンセプトアーティストの能丸督之氏)がいるし,山﨑もマンガが書ける。このマンガ風のものにちょっと動きを加えたら……という風にアイデアを出してやってみたらすごくいい感じで。
4Gamer:
なるほど。初めて見たとき相当手が込んでるなと感じましたし,むしろこっちがGhMらしいなって思いました。
須田氏:
同じように宇宙船の中もフルモデルの予定だったんですが,ここは全面ドット絵になりました。
ROMEOの開発では,Xでつながったローレゾ映像作家の服部グラフィクスさんにちょこちょこお願いしていたですが,そこで宇宙船のパートを相談してみたんです。
そうしたらまるっとドット絵で仕上げていただけて。これまたすごい出来で,ぜんぜん違和感がないんですね。
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4Gamer:
こちらも話を聞いた感じだと,ドット絵のほうがむしろGhMらしいなと感じました。
ちょっと変な話ですが,もしフルモデルだったとしたら逆に違和感というか,好きなインディーバンドが「メジャーになって変わっちゃったな……」みたいな感覚になったのかもって(笑)。
須田氏:
ああでも,その感覚は分かります。
あのままフルモデルで作っていたら,リッチではあるけど,ルック的にはほかのスタジオのゲームと変わらなかったかもしれないな,というのはあって。
こういうことがあったからじゃないですけど,あらためて「ちゃんと自分たちの色が出せたな」っていう実感が得られましたね。
4Gamer:
さまざまな制限があったことで,GhMらしさにあらためて向き合うきっかけになった。
須田氏:
まさにそうですね。
限られた条件の中で,いかにアイデアと個々のセンスでまとめるか。16bit時代からゲームを作ってきたので,「そうだよな,ゲームってこう作るんだよな」と思い出させてくれる瞬間がありました。その感覚が強く蘇ったというか,目が覚めるような体験でしたね。
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4Gamer:
私は「Travis Strikes Again: No More Heroes」からノーモア3への流れが好きなんです。小規模チームで作られたStrikes AgainでGhMのインディー精神が再び解き放たれ,その勢いがメジャー感のあるノーモア3に注ぎ込まれたような。
ROMEO開発の話を聞いていると,その流れがひとつの作品の中で起きていたようにも感じます。
須田氏:
確かにあのときの流れのような,うまく混ざった感じはありますね。
スタジオが大きくなっただけにチームビルディングはもちろん大事ですが,その前に個々の得意とするものを理解することが重要で。そしてその力を引き出すには,メンバーそれぞれの好みのようなパーソナルなスキルや武器を理解することも必要だとあらためて思いました。
4Gamer:
技術的な得意分野だけでなく,関心ごとや趣味みたいなところも。
須田氏:
そうですね。何か解決しなければならないことがあったとき,「こういうことをやるなら彼に相談しよう」「このアイデアならあの人だ」というふうに自然に名前が浮かぶような関係ができていると,こういうときにいい形でできるんだなと。
今回の開発では,そういった過程もあったことでゲーム作りの根底にある感覚をあらためて思い出せたし,昔の自分に少し戻れたような感覚もありました。
4Gamer:
あからさまに締めに向かってみたいな感じになりますが,そんなGhMの完全新作「ROMEO IS A DEAD MAN」が2026年に発売されると。具体的な発売日はまだ……。
須田氏:
そうですね。みなさんご存じのとおり,2026年には“あの”大作がありますので。
4Gamer:
あっ,“あの”シリーズのナンバリング6作目が。あれは現状,2026年5月26日の発売予定ですが,今後次第ではタイミングを見て調整を考える可能性も……と。
須田氏:
僕的には同発がいいんじゃないかなんて思っているんですけどね。
絶対みんな避けるじゃないですか。だったら,別にもう1本ぐらいあってもいいよね? って。でもそんなこと言ったらみんなに大反対されて。
4Gamer:
(笑)。たしかにひと盛り上がりするかもしれませんが,それがセールスにつながるかは……という。
山﨑氏:
ともあれ開発の状況的には,あとは細かいところをブラッシュアップしたり,ここでも須田が話したとおり「こういう面白いことはできないか」というものをちょっと足してみたりと,ゲーム自体はある程度まとまっています。
あと言えることは……サプライズゲストの話っていいんでしょうかね。
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須田氏:
そうそう。サプライズゲストキャラがいる……っていうところまではもう言っていいかな。
4Gamer:
気になりますね。それはノーモアにおけるミイケ(三池崇史監督)的な?
須田氏:
どんな人かはまだ明かせないですが,ひとりではなく3人組が登場します。
皆さん推測……いや,流行りの考察をぜひしてもらえると! ヒントとしては,そのうちひとりは,打ち合わせでGhMにきてもらう約束だったのが,リモートと勘違いしていたというエピソードがあります。
4Gamer:
ヒント……ひとりはうっかりさんと。
というわけで時間になりました。
State of Playで披露されてから2か月で,本記事の掲載タイミングで開催されるgamescomでまたいろいろと情報が出てきますね。
メディアとしてはもちろんですが,いちゲームファンとしても今後どのような仕掛けがあるのか? というところも楽しみながら「ROMEO is a Dead Man」を追いかけていきたいと思います。
本日はありがとうございました!
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- 編集部:TeT
- 編集部:Junpoco
- カメラマン:永山 亘

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