インタビュー
ドラマ「フォールアウト」シーズン2配信開始! ルーシー役エラ・パーネル&ハンク役カイル・マクラクラン,製作総指揮ジョナサン・ノーラン来日インタビュー
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物語の舞台は,2077年に発生した核戦争から200年以上が経過した世界。人類の一部は“快適”な地下居住施設・Vaultで暮らしながら,外界から隔絶された生活を送っている。
主人公ルーシー・マクレーンは,Vault 33で育った女性。ある日,Vault内で起きた重大な事件をきっかけに,父ハンク・マクレーンが拉致されてしまう。彼女は父を救うため,初めて外の世界──荒廃し,暴力と混沌に満ちた地上世界・ウェイストランドへと足を踏み出す。
そこで彼女はさまざまな出来事を体験し,B.O.S.(ブラザーフッド・オブ・スティール)に属する若き兵士マキシマス,グールの賞金稼ぎクーパー・ハワードといった個性豊かな人物たちと出会う。そうしてルーシーは,過酷なウェイストランドを旅していくことになる。
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2024年4月11日にシーズン1がPrime Videoで独占配信され,240以上の国と地域で視聴された。配信開始からわずか4日間で「Prime Video史上,最も視聴されたタイトルTOP3」にランクイン。「ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪」以来の世界的ヒット作となった。
批評家や視聴者からの評価は高く,レビューサイトのRotten Tomatoesでは93%という高スコアを記録。原作ゲームファンからは,終末世界特有の皮肉とユーモアを含んだ世界観の再現度が高く評価され,ゲーム未経験の視聴者からも「世界設定の作り込み」や「一気見したくなる構成」が支持を集めた。
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シーズン1の壮大かつ衝撃的なフィナーレを経て,シーズン2では舞台をモハビ・ウェイストランドへと移し,コアなファンを持つ「Fallout: New Vegas」でもおなじみのニューベガスが描かれる。
シーズン2はシーズン1と同じく全8話構成となっているが,配信初日に全話公開されたシーズン1とは異なり週に1話ずつ公開される。最終話となる第8話は2026年2月4日の配信予定だ。なお,シーズン2の配信を前にシーズン3の制作も決定している。
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シーズン2の公開を記念し,日本では12月11日にジャパン・プレミアが開催された。会場には,主人公ルーシー役のエラ・パーネルさん,父ハンク役のカイル・マクラクランさん,そして製作総指揮のジョナサン・ノーラン氏が登壇。ドラマについてその思いを語った。
4Gamerはその翌日の12月12日に,来日した3人の単独インタビューの機会を得た。その模様をお届けしよう。
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| エラ・パーネルさんとカイル・マクラクランさん |
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| ジョナサン・ノーラン氏 |
※以下のインタビューは敬称略です
ルーシー役エラ・パーネル/ハンク役カイル・マクラクランインタビュー
4Gamer:
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エラ・パーネル:
私の場合は,ルーシーの根っこにある信念です。それは“黄金のルール”,つまり「人に嫌なことはしてはいけない」「人は本来善である」という考え方ですね。彼女はその信念を本当に大事にしていて,それが彼女という人物の核になっています。
一番難しいのは,その価値観が少しずつ壊れていく過程を演じることです。ルーシーはウェイストランドで,悪意や混乱,痛み,残酷さといったものを次々と目にします。
暴力的な現実に触れ,そこで過ごす時間が長くなるほど,「人は善である」という信念が少しずつ削られていくんです。
カイル・マクラクラン:
失望を感じていくんだよね。
エラ・パーネル:
そう。彼女は傷ついていて,がっかりしている。本当はしたくない選択をしなければならなくなって,その結果として自分自身を嫌いになってしまうこともあります。
それまで大切にしてきた振る舞いや,自分の在り方が崩れていく感覚がありますね。その変化を,どこまで,どの段階で,どう表現するかが一番のチャレンジです。
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カイル・マクラクラン:
僕の場合も一番大切にしているのは,やはり彼の“人間性”です。ハンクというキャラクターは,シーズン1の始まりと終わりで,まったく違う存在になりますよね。
最初のエピソードでは,娘の結婚を心から喜ぶ父親でした。興奮していて,感情豊かで。ルーシーやノームとの家族関係も含めて,どこか愛される存在だったと思います。だから最初は,いわゆる「きちんとした父親」を演じていました。
4Gamer:
ただ,物語が進むにつれて,その立場は大きく変わっていく。
カイル・マクラクラン:
ええ。ある瞬間から,彼は突然「必死に生き延びなければならない」立場に置かれる。逃げて,もがいて,とにかく何とかしようとする状況に放り込まれるんです。
それがシーズン1の終盤で描かれましたが,シーズン2の冒頭では,彼は少し“生き返った”ような感覚を持っています。「自分には目的がある」「生きる理由がある」と感じている状態ですね。
演じるうえで難しいのは,どんな状況でも彼を単なる悪役や記号的な存在にしたくないという点です。
同時に,その人間性を保つこと自体が非常に難しい。ハンクは,自分の下す決断によって,結果的に多くの問題を引き起こしてしまう人物でもあります。その「決断」をどう人間として成立させるかが,いちばん苦労するところですね。
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4Gamer:
ルーシー/ハンクと,ご自身との共通点はどこにあると感じますか?
エラ・パーネル:
私はルーシーとかなり似ていると思います。どちらも楽観的で,人の良い面を見ようとしますし,難しい状況や扱いにくい人に直面しても,できるだけ前向きな姿勢を保とうとするところは共通しています。
ただ,私は彼女ほど何も知らないわけではないし,そこまでナイーブでもありません(笑)。ありがたいことに,ルーシーよりは少し人生経験がありますから。
それでも「できるだけ親切であることを選ぶ」という点は,彼女と同じだと思います。
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カイル・マクラクラン:
ハンクと私は,信念のレベルがかなり違うと感じますね。
彼は“そこまで踏み込む”人物ですが,もし私が同じ立場だったら,自分を見つめ直して「自分にはできない」と感じると思います。ああまで決断をする必要性を,私自身は持っていないです。
4Gamer:
ゲームメディアの読者,そしてシーズン2を楽しみにしているゲーマーに向けて,ひとことお願いします。
エラ・パーネル:
ひとこと? サンキュー!
(一同笑)
カイル・マクラクラン:
日本のファンの皆さんは,昨日のプレミアでもとても熱心に作品を楽しんでくれているのが伝わってきました。今回の物語は,エピソードそのものと同じように,キャラクターの行動が物語を前に進めていきます。
それぞれが「なぜその選択をしたのか」,その行動の背景に注目しながら観てもらえたら嬉しいですね。
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ジョナサン・ノーラン(製作総指揮)インタビュー
4Gamer:
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ノーランさんご自身もシリーズのファンということで,身構える部分はあったのだろうかと。
ジョナサン・ノーラン:
まず,そういう緊張はありませんでした。これでも私は,これまでいろいろな作品をやってきたキャリアもありますから(笑)。
自分自身がゲームのファンでもありますし,長く続くシリーズで,これだけ深い世界観を持つ作品をドラマとして作るという点では,もちろん大きな敬意は持っていました。
4Gamer:
失礼な質問となってしまいましたが,というのも日本では特に「原作付き作品」,とりわけゲーム原作はファンの目が厳しいことが多くて。ですのでその点について聞きたいと思ったのが理由にあります。
ジョナサン・ノーラン:
なるほど。おっしゃるとおり,ファンの人たちがそういった点が気になり,話題にするのは分かります。
でもそれは日本だけではなくて,世界中で同じだと思いますよ(笑)。
4Gamer:
たしかにそうですね(笑)。実際にシーズン1が配信されて,ゲームファンからの評価も非常に高い結果になりました。この反応はどのように受け止めていますか?
ジョナサン・ノーラン:
正直に言うと,僕自身はそこまで“オンライン”なタイプではないので,どこまで話題になっているかを細かく追っているわけではないんです。
ただ,支持してもらえているというのは,ゲームを本当に愛している人たち,そして僕たちが「これはゲームをベースにした新しい物語を語るんだ」と言ったときに,それを信じてくれた人たちがいた,ということだと思っています。
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4Gamer:
ゲーム原作の作品に向き合ってみて,これまでの映像作品とは違うと感じた点はありましたか?
ジョナサン・ノーラン:
ひとつ大きな学びがありました。それは,ゲームというメディアは,ほかのどんなメディアよりもファンとの関係性がとても親密だということです。
4Gamer:
親密,というと?
ジョナサン・ノーラン:
理由は大きく2つあります。ひとつは,そこに費やす時間の長さです。映画なら2〜3時間,ドラマシリーズでも8〜10時間ほどですよね。
でもゲームは,とくに「フォールアウト」のような広大な世界と自由な体験がある作品だと,何百時間,場合によっては何千時間もプレイされます。
4Gamer:
たしかに一度の体験で何百時間というのは,映画やドラマとはまったく違いますね。
ジョナサン・ノーラン:
ええ。だからファンの没入度や情熱は,どうしても桁が違うんです。
そして「フォールアウト」の場合,もうひとつ特別な点があります。それは「誰ひとりとして,まったく同じ体験をしていない」ということです。
4Gamer:
舞台やメインストーリーは共通していても,どう巡るかはプレイヤー次第,という。
ジョナサン・ノーラン:
そうです。だから全員を完全に満足させることは不可能なんですよ。これは,これまでの制作経験の中でも,何度も痛感してきたことですね。
4Gamer:
ドラマ版「フォールアウト」は「非常に忠実な映像化」と評されることが多いですが,実際にはゲームの物語をなぞっているわけでも,共通のメインキャラクターがいるわけでもありませんね。
ジョナサン・ノーラン:
ええ。それでも「忠実だ」と言ってもらえたのは,正直とても嬉しかったですね。
私にとっての忠実さというのは,設定をそのまま再現することではなく,その世界の“感覚”や“精神”を再現することだと思っています。
皮肉が効いていて,シニカルで,独特のユーモアがある。そのトーンやマインドセットこそが「フォールアウトらしさ」なんじゃないかと思い,そこはとくに大事なものだととらえていました。
4Gamer:
コアなゲームファンと,このドラマで初めて「フォールアウト」に触れる人。その両方に向けたバランスは,かなり難しかったのでは?
ジョナサン・ノーラン:
大事なのは,原作を本当に愛していること。そして,あまり心配しすぎないことですね(笑)。
制作チームの構成も大きかったと思います。「フォールアウト」の大ファンと,ほとんど触れたことがない人たちが,ちょうど半々くらいだった。そのバランスがあったからこそ,ファン向けに寄りすぎることも,説明過多になることも避けられたのだと思います。
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4Gamer:
制作を通して,改めて気づいた「フォールアウト」の魅力は何でしょうか。
ジョナサン・ノーラン:
世界のスケールですね。ドラマ制作を通して,トッド・ハワードや彼のチームのクリエイティブを深く知るほど,その大きさに圧倒されました。
ゲームの中には本当に膨大なストーリーテリングが詰め込まれていて,だからドラマでは,画面に映る小道具一つひとつが「過去に何があったのか」「誰に関係しているのか」を語るように意識しています。
4Gamer:
ルーシー,ハンク,そしてクーパーを軸にした群像劇という点も,ゲームとは違う面白さですね。
ジョナサン・ノーラン:
そうですね。ゲームではプレイヤーがひとりの冒険者になりますが,ドラマでは複数のキャラクターの旅路を,それぞれの視点から描ける。これはテレビシリーズならではの強みだと思います。
それから,フラッシュバックで「世界が終わる前」の時間を描けるのも,ドラマならではですね。
4Gamer:
ゲーマーとしては,やはりニューベガスらしき風景が映った瞬間は“来た!”という感じでした。
ジョナサン・ノーラン:
(笑)。お好きですか?
4Gamer:
もちろんです。シーズン1でも「あっ。この人は……?」みたいなこともありましたし,シーズン2への期待は高まりました。
ジョナサン・ノーラン:
僕自身もニューベガスは大好きですし,ニューベガスを舞台に物語を描けるのは本当に楽しみでした。
ロバート・ハウスは,ニューベガスを象徴する存在と思っていて,個人的にもとてもお気に入りのキャラクターです。街の描写も,細かいディテールやイースターエッグをたくさん仕込んでいるので,プレイ経験のある人ならきっと楽しめるはずです。
4Gamer:
最後に,読者,そしてドラマを楽しみにしているゲームファンへメッセージをお願いします。
ジョナサン・ノーラン:
ゲームを遊んでくれてありがとう。ドラマを観てくれてありがとう。
このシーズンを,僕たちが作るのを楽しんだのと同じくらい,楽しんでもらえたら嬉しいです。
4Gamer:
ありがとうございました。
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配信情報
タイトル:「フォールアウト」シーズン2
配信日 :12月17日(水)よりPrime Video にて独占配信中
(C)Amazon MGM Studios
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