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最速でゲームプロデューサーを目指すには。ゲーム業界特化の人材採用支援・キャリア支援会社が,プロデューサー100人の統計値から分析した結果を公開[CEDEC 2025]
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このセッションでは,ゲーム業界の人材採用支援・キャリア支援を手がけるランウェイ・エージェンシーの代表取締役 長井 馨氏とRPO事業部 マネージャー 冨安俊範氏が,国内のゲームプロデューサー100人のキャリアデータを分析した結果,導き出されたプロデューサーへの最短ルートを紹介した。
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最初に紹介されたのは,現在のプロデューサーのペルソナだ。それによると40〜50代男性,東京在住となっており,メディアに露出するプロデューサー像と合致する。
細かく見ていくと性別に関しては男性が96%なのに対して,女性は4%と極端に少ない。年代では30代が20%,40代が38%,50代が39%となり,40〜50代で8割近くを占めていることから,一定の経験を重視する職種だということが読み取れる。居住地は東京が65%,関東3県を含めると89%が首都圏に集中している。
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プロデューサーのキャリアと現職分析の項目では,まず転職回数が平均5.2社となり,転職を重ねてスキルを蓄積していくことが一般的であることが示された。また現職区分では,モバイルゲームが55%と最多で,コンシューマゲームが20%とゲーム業界が75%を占めている。一方,ゲーム以外のエンターテイメント領域ではVTuberやWeb3など新興分野も増加傾向とのこと。現職の企業規模は500人以下の中小企業の合計が68%となり,大企業よりも成長段階の会社におけるプロデューサーの需要が高い傾向にある。
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プロデューサーの年収は,平均が913万円,中央値850万円,最頻値が100人中18人の600万円となる。最高年収は2700万円で,経験とスキル次第で大きく年収アップが狙え,かつキャリア形成で高年収を目指せる職種との見解が示された。
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プロデューサーの1社目キャリアの項目では,まず新卒入社した会社でそのままキャリアを重ねてプロデューサーになったケースはわずか13%であり,87%が中途採用だということが紹介された。
また新卒入社した1社目の業界分布を見ると,ゲーム業界は31%と意外に少なく,異業種での経験がプロデューサーとしてのスキルの源泉となっているという見解が示された。1社目の企業規模は501人以上が42%,101〜500人が28%,100人以下が30%となっている。
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プロデューサーが最初に就職した業界は,コンシューマーゲーム19%,モバイルゲーム8%,テレビ番組7%,アニメ5%,玩具5%,ソフトウェア4%,その他52%となった。
ゲーム業界もしくは近しい業界が半分近くを占めている一方で,残り半分がその他の業界である。
また最初の職種についてはプランナーやディレクター経験者が多いものの,営業,エンジニア,デザイナーなど多様なバックグラウンドを持つ人材もおり,プロデューサーになるまでに総合的なスキルを身に付けていることが読み取れる。
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具体的なプロデューサーの最初の職種ランキングも紹介された。1位がプランナー15%,2位がディレクター(アシスタントディレクターを含む)14%,3位が営業12%,4位がエンジニア11%,5位がデザイナー7%となる。営業出身者が12%と意外に多いが,これはプロジェクトを進めるうえで必要となる渉外や交渉において,営業経験を生かすケースが多いのではないかとの見解が示された。
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プロデューサーの学歴に関しては,大学(MARCH)卒が26%,専門学校卒が24%,その他大学卒が19%,海外の学校卒が12%,高校卒が10%,早慶帝大卒が9%となる。専門学校卒が多数派であることから,学歴だけでなく実践的なスキルを重視する業界特性が表れているとの見解が示された。
専攻分野に関しては,文系が41%,ビジネス系が25%,理系が20%となり,多様な知識背景が求められていることが読み取れる。
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初めてプロデューサーを務めた年齢は,平均33.4歳で,およそ社会人になってから8〜10年目となる。
半数近くがモバイルゲームでプロデューサーとしてのキャリアをスタートさせているが,近年はモバイルゲームの大規模化やリリースが絞られてきている傾向にあることから,今後は少し状況が変わるのではないかという予想が示された。
さらに1本目からコンシューマゲームをプロデュースする人材も20%いるが,大型IPの派生タイトルやダウンロード専用タイトルを任されるケースが多いとのこと。アニメやテレビ番組,音楽のプロデューサーからスタートしてゲームのプロデューサーになるケースもあるそうだ。
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プロデューサーの経歴から得意なスキルを1人あたり3つずつ抽出した結果も示された。社内で合意を取るなどプロジェクトを立ち上げるために必要な「事業開発・企画開発」のスキルは,実に60%が該当。プロジェクトの進捗に関わる「プロジェクトマネジメント」も52%が該当する。
IP自体の開発やメディアミックス,権利者からゲーム化の許諾を取るなどの「IP関連」スキルや,「マーケティング・プロモーション」スキルはいずれも半数近くのプロデューサーが該当するという結果に。
次いで「資金調達・予算管理」スキルや「海外展開・事業」スキルといったように,全体的にはクリエイティブに注力しつつも,対外的なスキルやビジネス面の業務スキルを求められる職種であることが示された。
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プロデューサーのキャリア設計スキルのイメージも示された。このイメージは縦軸を管理機能スキル,横軸を開発機能スキルとし,プロデューサーのタイプを「プランナー」「プロジェクトマネージャー」「ディレクター」「プロデューサー」の4つに分類している。
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まず左下のプランナータイプは,ユーザーが何を望んでいるか,あるいは競合タイトルと比較してどうかといったような「市場理解」スキルが重要となる。加えて,ゲームの企画を立ち上げる「企画開発」やコンテンツの「プロモーション」,関連コンテンツを生み出す「マーチャンダイジング」が求められる。
右下のディレクタータイプは,メディアミックスなどの「IP活用」,運営型のタイトルが増えていることを踏まえた「KPI分析」のような現状把握スキル,「品質管理」が求められる。
「マーケティング」に関しては,特定のタイトルだけではなく,自社タイトルのラインナップを見ながら売れるための仕組み作りを考えていることも示された。
左上のプロジェクトマネージャータイプは,メンバーのモチベーションコントロールを含む「プロジェクトマネージメント」や,「予算管理」が求められる。
さらにメンバーを自分で集めたり育成したりする「採用育成」も求められる。加えて,権利者やデベロッパとの契約,知的財産権,著作権などの法的知識を指す「契約法律」も重要だ。
右上のプロデューサータイプは,プロジェクトの予算管理,予算調達,社内の承認を取る「資金調達」や,それまでモバイル事業がメインだった会社にコンシューマ事業を立ち上げるといった「事業開発」が求められる。
既存のIPを使うのではなく,ゲームから新たにIPを立ち上げるといった「IP開発」は,難度こそ高いものの非常にチャレンジしがいがあると紹介された。
「海外展開」に関しては,近年は国内だけで儲けを出すのは難しくなっているため,Steamでの展開やマルチプラットフォーム展開,展開する国や地域の選別などを検討しているケースが示された。
セッションの最後には,あらためて最速でプロデューサーになるためには,早い段階で企画開発・事業開発のようなスタートアップの経験やプロジェクトをリードする経験を積むのが重要であること,そして専門特化の職人型で深く掘り下げたキャリア形成よりも,開発とビジネスの両面を意識できる視野の広いキャリアが求められることが示された。
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