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次世代人材を育成するために,今のゲーム業界が取り組んでいることとは。CESA人材育成部会とバンダイナムコスタジオ,サイバーコネクトツーが事例を紹介[CEDEC 2025]
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印刷2025/08/06 17:35

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次世代人材を育成するために,今のゲーム業界が取り組んでいることとは。CESA人材育成部会とバンダイナムコスタジオ,サイバーコネクトツーが事例を紹介[CEDEC 2025]

 国内最大級のゲーム開発者会議「CEDEC 2025」で,2025年7月24日,セッション「優秀な人材を業界に呼び込む為に! 次世代育成を支援する取り組み」が実施された。

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 このセッションでは,CEDECを主催するコンピュータエンターテインメント協会(CESA)およびCESA人材育成部会,そしてゲーム企業各社の次世代人材育成に対する取り組みや今後の展望が紹介された。登壇者は以下の3名だ。

  • CESA 人材育成部会 部会長 土田善紀氏
  • バンダイナムコスタジオ HR戦略課 アシスタントマネージャー 平野響子氏
  • サイバーコネクトツー 人事課 人事室 チーフ 西川幸恵氏

左から土田善紀氏,平野響子氏,西川幸恵氏
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CESAおよびCESA 人材育成部会の取り組み


 CESAの人材育成部会は,ゲーム業界の人材育成および獲得に関することを一手に引き受ける部署だ。活動に応じてワークグループを設置し,それぞれの作業に従事している。
 具体的かつ代表的な取り組み事例は,「就業状況,人材育成調査」「小中学生向け施策」「コンテスト施策」,そして「人材育成施策」となっている。

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 「就業状況,人材育成調査」のワークグループでは,学生の就業や企業の状況などのアンケート調査を行って活動の指針としている。調査対象は青少年と開発者に分かれており,青少年対象のアンケートでは,当初は小中学生とその保護者を対象にしていたが,最近では高校生,高専生,大学生も含めて幅広い範囲で現在の状況を確認している。調査の内容は,「将来就きたい職業」でそれぞれの学年や性別などで変化していく状況を定点観測しているという。

 また,ゲーム開発者を志向しているかどうか,どの年齢からゲーム開発者を目指さなくなるか,ゲーム開発者を目指すにあたり何がハードルになっているのか,そして,普段どのようなプラットフォームやデバイスでコンテンツに触れているのかなどを調査,確認することにより,子どもたちがゲーム業界を目指したくなる仕掛けを作るための情報収集を行っている。

 開発者を対象としたアンケートでは,ゲーム開発者のキャリアに関する意識や,行動の現況を調査している。具体的には,ゲーム開発者の最終学歴や学問系統,勤続状況,年収,転職回数といったデータを取っている。

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 「小中学生向け施策」では,上記のアンケート結果をもとに,2019年より「経産省こどもデー」と連携し,2022年には「Roblox」のプログラミング体験,2023〜2024年にはサウンドクリエイター体験を小学生向けに実施した。2025年8月には,セガの協力を得て「ぷよぷよ」のプログラミング体験を提供する。

 また,中学生向けのゲーム業界学習講座も実施しており,これは,修学旅行中の校外学習という形で,ゲーム産業の構造の説明や職種の紹介などを中学生に対して行っているとのこと。
 例えば絵や文章,プログラミングなど,生徒それぞれの得意分野に応じて,「ゲーム業界にはこういう職種がある」という紹介をしたり,昔と異なり,現在のゲーム業界がしっかり成熟していることを伝えたりしているという。
 なお,現在は人材育成部会が内容を精査し,現代向けにリニューアルしている最中で,2026年から活動を再開する予定だ。

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 「コンテスト施策」としては,2007〜2023年まで開催されていた「日本ゲーム大賞 アマチュア部門」が紹介された。これは,2006年までの日本ゲーム大賞 インディーズ部門と,CESA スチューデントゲーム大賞を統合したコンテストで,発足当初の応募は200件程度だったが,最終年には450件まで成長した。対象者は専門学校生や大学生,一部の社会人で,専門学校の中には,このコンテストへの応募をカリキュラムに組み込んでいるところもあったという。

 2018〜2023年まで開催されていた「日本ゲーム大賞 U18部門」は18歳以下を対象としたコンテストで,ゲームそのものだけでなくプレゼンテーションの内容も審査された。このコンテストからは,現在も活躍するゲーム開発者を輩出しているとのこと。

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 また,2023年にスタートした「神ゲー創造エボリューション」は,上記のアマチュア部門とU18部門を継承・統合した形でNHKエンタープライズが主催している。CESAは「特別協力」という立場で,人材育成部会から審査員派遣および講評,賞の授与などを行っている。

 2011年に始まった「PERACON」は,事前に設定されたテーマに沿った企画コンセプトを,A4用紙1枚にまとめて競うコンテストで,例年CEDEC会期中に行われる。

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 「人材育成施策」では,2025年4月に「Top Game Creators Academy」(TGCA)を本格始動させた。これは,CESA会員企業各社の現役ゲーム開発者のサポートを得て,世界に通用するゲームIP・コンテンツを創出できるクリエイターを育成するというプロジェクトだ。始まったばかりで,人材育成部会では現在,もっとも注力しているそうだ。

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ゲーム業界各社の取り組み


 ゲーム業界各社の次世代人材育成については,独自に取り組んでいるものと団体で取り組んでいるものに大きく分かれるという。
 前者については,カプコンが自社開発したエンジン「RE ENGINE」を用いてゲーム制作コンペティションを行っていることが紹介された。こうした,ゲーム開発の現場で実際に使われているものに直接触れることは,学生にとってキャリアへの動線として魅力的であり,仕事の実感も湧くのではないかという見解も示された。

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 なお,ここ数年は地方自治体との連携に注力している企業も多いとのこと。
 セガと札幌市による「SAPPORO GAME CAMP」や,讃岐市の「SANUKI × GAME」が紹介され,また群馬県の「tukurun」では,各社を招聘し,実践に近い形で小中学生に3Dアニメーションをレクチャーしたり,保護者に向けてゲーム業界の現況を伝えたりしているという。

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 平野氏からは,バンダイナムコグループの次世代人材育成の取り組みが紹介された。平野氏によると同グループでは,人材育成をサステナブル活動の一環として行っているという。

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 バンダイナムコスタジオでは,小中高の学校を訪問し,児童の制作物の講評会を開催したり,ワークショップの講師を務めたりしているほか,新人研修作品を活用したキャリア教育も行っている。会場では,小中高,それぞれに合わせた内容をピックアップしていることも示された。
 中高生向けに「鉄拳」シリーズのステージがどのように作り込まれているか,あえて解像度を落としている部分があるのはなぜか,といったことを説明すると,憧れのまなざしを向けられるといったエピソードも披露された。

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 さらに,海外の専門学校や大学からの会社見学を受け入れたり,社員の子ども向けのワークショップを開催したりもしている。後者には,身近な存在である親の仕事に憧れを持ってもらい,周囲に「ゲーム会社ってすごい」と広めてもらうといった狙いがあるとのこと。
 加えて,オープンソースのC++フレームワーク「Siv3D」を支援していることや,現実世界のライティング環境をキャプチャする「TrueHDRI」のアセット配布,無償リグの配布といった技術提供の取り組みも紹介された。

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 続いて西川氏からは,サイバーコネクトツーの取り組みが紹介された。
 もっとも代表的な取り組みは,九州・福岡のゲーム関連会社とゲーム系教育機関による任意団体「GAME FACTORY'S FRIENDSHIP」(GFF)の人材育成事業だ。GFFでは次世代ゲーム開発者の育成を目的に,セミナー開催やインターンシップの斡旋,教育カリキュラムの構築支援などを行っているという。

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 その中でも「GFF 1UPセミナー」は,GFF学校会員の学生を対象に,GFF参加企業で活躍しているゲーム開発者がゲーム業界に入るために必要な知識や情報を伝えるという内容となっている。2024年には,基礎編ポートフォリオ編面接編という形で3回開催された。

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 また「GFF 1UPセミナー」では,1社ではなく複数社の視点や見解が披露される。各社が同じく重視している部分がある一方,この会社はここに視点を向けている,あの会社はこういう考え方でゲームを作っているというように比較できるので,自身の作りたいものは何か,就職したいのはどんな会社なのかを学生が具体的に思い浮かべられるのではないかとの見解が示された。

 西川氏は,就職活動をする学生だけでなく,その前段階の学生にゲーム業界について学ぶことが重要だと語る。ただ,「GFF 1UPセミナー」のような取り組みは1社でやるにはかなりのパワーが必要なので,いろいろな企業と連携することで,より多くの情報を発信できると話していた。

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 サイバーコネクトツーでは,小中学生を対象とする社会人講話キャリア教育も行っている。
 2024年1月から現在までに25校,児童・生徒数にして約300〜400人が受講した。児童や生徒たちからは「ゲーム業界に興味が湧いた」といった感想が寄せられているという。また,登壇したゲーム開発者も,ゲームやゲーム業界に興味がある子どもたちの生の声を聞くことにより,ポジティブな効果を得られるそうだ。

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 以下のスライドにもあるように,ゲーム開発者は中学生の将来就きたい職業ランキングのトップ10にはかろうじて入っているものの,高校生では圏外になっている。そのため,小中高生の段階からゲーム開発者とはどんな職業なのか,ゲーム業界とはどんなところなのかを学ぶ機会を設けることの重要性も示された。

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 なお,小中高生にゲーム業界を知ってもらう一環として,「CEDEC+KYUSHU」では2023年から高校生以下を対象に無料のビジネスパスを発行している。2024年は100人以上の小中高生がこのパスを利用し,ゲーム開発者のセッションに耳を傾けたとのこと。

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 西川氏は,今の子ども達がどんな職業に関心を持っているかに目を向けないとゲーム業界の人口がどんどん減ってしまうという危惧を示し,「そうなると面白いゲームも作れなくなる。未来の仲間を増やす意味でも,人材への投資に協力してほしい」と聴講者に呼びかけてセッションを締めくくった。

「CEDEC 2025」公式サイト

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