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面白さの一段上に,どうしても伝えたいものがあるのがシリアスゲームの本質。「Play & Learn 2026」主催・石神康秀氏の考えるシリアスゲームとは
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印刷2026/05/14 18:00

インタビュー

面白さの一段上に,どうしても伝えたいものがあるのがシリアスゲームの本質。「Play & Learn 2026」主催・石神康秀氏の考えるシリアスゲームとは

 「教育」「研修」「社会課題」をテーマに掲げるボードゲームの展示会「Play & Learn 2026」が,2026年4月19日,ビジョンセンター横浜みなとみらいで開催された。
 開催5回目となる今回は,IGDA日本主催の「東京シリアスゲームサミット」が前日と前々日に開かれており,シリアスゲーム関連の催しが集中する3日間となった。

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 Play & Learn 2026の開幕後は,全出展者が30秒ずつ自作を紹介していく出展者紹介ラッシュが組まれ,会場の見取り図を一気に把握できる仕掛けになっていた。
 実際にブースを歩いてみると,研修色や勉強色の濃いゲームばかりではなく,純粋に対戦が熱いもの,子どもの遊びに学びを溶け込ませたもの,現場のリアルを再現したものなど,作品の幅広さが印象的だった。
 出展者の顔ぶれも,学生からクリエイター,企業まで雑多に混じり合っている。

「栄養ヒーローズ」公式サイト):野菜や食材をモチーフにした栄養素キャラクターを集めるカードゲーム。ゲームはポーカーのような形で,相性の良い栄養素を組み合わせると高得点。ただ,偏った組み合わせは過剰摂取扱いになることも
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「ニャイス!コード」公式サイト):ダイスの出目がそれぞれ行動に対応しており,それらを「プログラム」として組み合わせ,猫を動かして魚を取りに行くボードゲーム。魚を取って,ぴったり戻ってこられたら勝ちというルールで,プログラミング的な思考が遊びながら身に付く仕組みになっている
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「サーキュラーエコノミーゲーム 金継ぎ編」公式サイト):割れた焼き物を,漆や金粉を集めて修復していくカードゲーム。そのまま割れた状態だと0点だが,修復すると逆に価値が上がるという,金継ぎの考え方そのものが得点ロジックに組み込まれている
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「まちクリーチャー図鑑」:街の中にあるちょっと不思議な存在を「クリーチャー」として観察・収集するという発想のゲーム。日常の風景を別の視点から眺め直すきっかけになるような作品だった
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「渋谷ゴミ問題解決ゲーム」:渋谷区のゴミ問題をテーマにしたカードゲーム。分別の知識や区独自のルールを学びながら,地域課題を体験できる城西国際大学星野ゼミの作品
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「名前がよくわからないモノ集めました。」公式サイト):身の回りにある見たことはあるけど,名前を知らないモノを題材にしたカードゲーム。普段は意識しないモノの名前や役割を,遊びながら知ることができる切り口になっていた
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「知財でポン!」公式サイト):知的財産をテーマにしたカードゲーム。著作権や商標といったわかりにくい分野だが,それらがいかにクリエイターを守っているのかを体験できる内容になっていた
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 なぜこれだけの幅が1つのイベントに集まっているのか。その答えを探るべく,主催の石神康秀氏へのインタビューに話を移していきたい。

■東京シリアスゲームサミットでの石神氏の講演
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 シリアスゲームを収集・保存し,誰もが研究や参考にできる「博物館」を作る。東京シリアスゲームサミット1日目に行われた,ボードゲーム編集者の石神康秀氏が登壇したセミナーと,クロストークをレポートする。

[2026/04/22 18:50]

4Gamer:
 お忙しいところ,ありがとうございます。今回,「東京シリアスゲームサミット」と合わせるような日程になっていましたが,何か理由があったんでしょうか。

石神氏:
 シリアスゲームサミットをやっているIGDA日本SIG-Growthの佐藤さんが,せっかくだから日程を合わせたほうが盛り上がって1つのイベントっぽくなるんじゃないかと言ってくださったんです。

4Gamer:
 東京シリアスゲームサミットを取材していたら,Play & Learnの紹介を受けて,取材させていただくことになりました。

石神氏:
 ありがとうございます。今日の人の入りも,多分そこのつながりが絶対あると思います。

4Gamer:
 ラインナップとしては「教育」「研修」「社会課題」を掲げていますが,これって審査もあるんですか。

石神氏:
 外向けにはそう謳っていますが,それを承知のうえなら何を出してもいいんです。テーマを掲げている以上,それを見たい人が来ますから,例えばただのエンタメゲームを出してもアンマッチになるかもしれない。ただ,出すこと自体は構わないという形です。

 うちとしては基本的に審査でお断りしていなくて,外向きのテーマだけ伝えて,分かってくれたうえで出るのであればいいですよ,という感じで,皆さん自由にやっています。

4Gamer:
 昔ながらのボードゲームもありますが,確かに学びにつながるといわれるとうなずける作品が多いですね。

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「クロキノール」:カナダ発祥のアクションボードゲーム。指で駒を弾いて盤面中央を狙う,カーリングとビリヤードを足したような遊び。シンプルだがテンポが良く,世代を問わず楽しめる存在感があった。
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「ラミーキューブ」:1〜13×4色のタイルでセットを作って場に出していく麻雀のようなゲーム。自分のタイルだけでなく,場のタイルを自由に組み替えてよいルールが特徴で,1ターンで一気に状況が動くことも

石神氏:
 何かしらシリアスゲームをやる人たちと接点を持ちたいと思うなら,参加歓迎です。


シリアスゲームとは何か


4Gamer:
 シリアスゲームの範囲について,石神さんはどのように考えていますか。

石神氏:
 明確な定義は多分どこにもないと思いますけど,私の中では「優先順位だけ」だと思っているんです。
 グラデーションがいっぱいあって,面白さや学びの比率もいろいろあって全部自由ですけど,目的の上にあるのが学びだったり社会課題だったり,何かしらの課題感だったり。面白さがある/ないではなくて,これをどうしてもやらせたいというのが上回っていると,シリアスゲームと呼ぶんじゃないかなと個人的には思ってます。

4Gamer:
 ゲームだけにとどまらない目的が重要なんですね。ゲーム寄りの作品もあれば,出発点が研修や勉強なんだろうな,と感じる作品もあります。

石神氏:
 エンタメで作っていて,途中から学びの要素を載せることで優先順位が上になるパターンもあるし,最初から学びで行って,学びを超えない程度に面白さを入れるパターンもある。
 同じ階層構造のなかで,どこから入るかの違いというだけです。

4Gamer:
 そのバランスみたいなものはありますか。

石神氏:
 仮に両方突き抜けちゃうと,多分面白さが常に勝っちゃう気がします。ある程度,抑えておかなきゃいけない。
 面白さが突き抜けると,体験が大事な研修ゲームでも環境を破壊しちゃうんですよ。アドレナリン全開でわーっとなったら,全部が吹き飛んじゃうじゃないですか。

4Gamer:
 確かに,興奮のほうが勝っちゃうと,学びが楽しかったという体験に覆い隠されちゃいますね。

石神氏:
 そうなんです。だからそこは,本質,つまり伝えたいことや思いの部分を最優先に考えるのが大事で。それこそが,シリアスゲームなんだろうと思います。


シリアスゲームを構成する要素


4Gamer:
 会場を回っていて,本格的で重量級のボードゲームもあるんだな,と驚きました。学ぶ前に,ゲームを覚えないといけないものもあって。

石神氏:
 これは私の勝手な分類ですけど,シリアスゲーム寄りのものって,何かを伝えるときに「情報」「状況」「構造」のどれかに当てはまるんじゃないかと思っているんです。
 情報って文字で書いてあるだけなので,カルタでもすごろくでもいい。書いてある文字を読めば言いたいことが分かる類のものですね。

4Gamer:
 そうですね。

石神氏:
 状況を伝えるのは,例えば「災害時にどうするか」「立場の衝突があったときにどうするか」みたいな,シミュレーション寄りのものです。これって,どうしても端折ると何のことか分からなくなっちゃうので,大規模になりがちです。

 ステークホルダーがゴチャゴチャ言ってくる場面をスマートに描くと,「文句が来たから無視しました」で終わっちゃう。あちこちから次々と文句が降ってくるようなイライラを体験させるには,ある程度のシミュレーションが必要で,規模が大きくなるんです。

話を聞いて確かにと思ったのが,「アンクラ!!災害医療/多数傷病者対応シミュレーションボードゲーム」(公式サイト)だ。交通事故が発生し,現場に駆け付けると想像を絶する状況が広がっている。限られた情報と資源と時間のなかで,次々変化する状況に対応する作品
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 構造を伝えるものは,仕組みについての自分の主張を出すものなので,シンプルにできる人もいれば,伝えるためにちょっと複雑になる人もいて両方ありえます。
 条件設定で,あれもこれも削れないとなると,どんどん複雑になっていく。

4Gamer:
 インストが大変になりそうですね。

石神氏:
 ただ,時間は多少かかるけど,そのゲームに詳しくなくても説明がスッと入ってくるものも結構あるんです。
 もともとがシミュレーション寄りなので,直感的に意味が理解できるから。

4Gamer:
 日常生活などで自分が体験したことは,イメージしやすいです。

石神氏:
 確かに,と納得できれば,覚えておく必要がない。次に必要になったときに,あれが必要だと分かる。でも,ただの記号でAとCを集めたらアルファ,BとDだとガンマと言われても,もう覚えられないじゃないですか。

 シリアスゲームは大体背景や物語があるので,物語に沿って作られていれば,時間はかかるけど実はそこまで複雑じゃないものは結構あります。

4Gamer:
 シリアスゲームとシミュレーションって,相性がいいんですね。

石神氏:
 うまくできているところは,見た目は複雑そうでも,やってみたらそんなでもないこともあります。
 こだわって作っている人たちが多くて,目的が上にあると言っても,ゲーム性のほうを妥協しない人がたくさんいる気がします。


編集者としての活動


4Gamer:
 会場を回っていると,石神さんにアドバイスをもらったという出展者がすごく多いんですけど,どのようなアドバイスをされているんですか。

石神氏:
 私は基本的に自分のことを「編集者」だと思っているんですけど,作家として依頼を受けてゲームを作る人は,伝えたいメッセージをひたすら考え込んでしまうんですよね。勉強し続けるから,「分からない人の気持ち」が分からなくなってしまう。

 ゲームとしてはちゃんとできているのに,入り口のところが伝わっていないということが冷静に見えなくなる。
 そういう時に私が話に行って,ここがちゃんとつながっていないですよ,あなたが理解していてもこちらには伝わっていない,と指摘してあげる。そうすると修正できる。

4Gamer:
 第三者ならではの視点ですね。

石神氏:
 私には理解できなかったと素直に言うことが,意外とできないんです。ゲームを作っている人って,仲間内で作ったり,周りも仲間と思える人ばかりだったりするじゃないですか。
 だから,あんまり批判はしづらい。一生懸命やっているから,分かんなくても,なんとか分かろうとしてあげたりする。

 それを単に冷静な目で,これだと意味が分からないですよ,と言ってあげるのがアドバイスというか意見というか,そういう感じですね。

4Gamer:
 石神さん自身も,シリアスゲームにはめちゃめちゃ詳しいわけじゃないですか。

石神氏:
 いえいえ。伝えたいテーマの専門領域については,全然詳しくないです。

4Gamer:
 ゲームのロジック側は知識豊富だけど,伝えたいメッセージや内容のほうは詳しくないと。

石神氏:
 そうですね。今は伝わっていませんよと指摘して,本当はこういうことを伝えたいんですと出てきたら,じゃあこのメカニズムじゃなくてこっち側にしないとつながらないですね,という話は出ます。
 本業はそっち側ですけど,ゲーム経験もいっぱいあるので,両方できればやりますみたいな感じで。

4Gamer:
 アドバイザーとしては,制作のどの段階に入ることが多いのですか。

石神氏:
 本当にまちまちです。知り合いづてに呼ばれることが多くて,雑談中に流れで見に行くパターンがちょくちょくあります。

4Gamer:
 ボードゲームってオフラインの体験じゃないですか。直接会いに行くって感じなんですか。

石神氏:
 会いに行ったり,どこかでやるときに持ってきてもらったり,一緒にやったり。ただ説明書を読むだけのこともあります。読み慣れているので,やらなくてもある程度想像はつくというのもあるかもしれない。

 ゲームは体験が大事なので,基本はやってみないと分からないんですけど,いろんなゲームをやっているから,形式が見えれば,これはあれ系のゲームだなと察して質問が浮かぶ。
 そこを質問して,やっていないと返ってきたら,よくある失敗パターンだから直したほうがいいですね,と。

4Gamer:
 陥りやすいアンチパターンを,たくさん知っているわけですね。

石神氏:
 そうですね。こういうことをやるならここに配慮が必要,このパターンは気をつけないとつながらない,というのがあるので,オンラインでルールを見せてもらったり,アイデアを聞いたときにいくつか言ってみる。
 ただアドバイス業をやっているわけではないので,本当に縁があったらやっている感じです。

4Gamer:
 割とボランティア的な側面もあるんですね。

石神氏:
 ほとんどそうだと思います。科研費を取った大学から呼ばれたときには研究費が出たり,学習塾でレビューを依頼されたときには最低限の人件費が出たりしますけど,まあそんな感じですね。


AI技術の活用


4Gamer:
 石神さんはAIをかなり活用されていると思うんですけど,シリアスゲームの開発にも活用できそうですか。

石神氏:
 使えると思います。本当はもともと,自分の編集者の仕事を代わりにやってくれる「企画開発のアシスタントAI」が欲しかったんですよ。誰かの手伝いをしてあげる側のAI。でも,どうにもうまくいかなくて。

 ただ,そのために仕込んだノウハウが結構溜まっていて,何かに使えないかなと思ったときに,レビューする人にはなるんじゃないかと。
 作ることはできないけど,人の作ったものに文句を言うことならできそうだと思って,文句を言うGem(Geminiのカスタム機能)を作ったんです。


 学生に使わせたら,いい感じだったみたいで。何か作って渡すと,私が言いそうな観点で全部チェックして,ダメ出しを返してくれる。

4Gamer:
 もう「AI石神」じゃないですか。

石神氏:
 そんな感じです。私自身もそのGemを突破できなくて。これはいいんじゃないかと思ったものを送ったら,「説明が丁寧なことは褒められるところですが,それ以外は全部ダメです」と返ってきて。
 本人と課題の接点が甘い,課題の深掘りも甘い,と私が言いそうなことを次々に指摘されて,すごく落ち込んで。

4Gamer:
 もう1人の自分に。

石神氏:
 そこで初めて,「私,人にこんなこと言ってんだ」と気づきました。自分だと分からないから,こんなにひどい言い方をしていたんだなって。周りに聞いたら,いつもそんなこと言ってるよ,と返されて。
 本当にそっくりにできすぎて怖いです。

4Gamer:
 そのGemはどうやって作ったんですか。

石神氏:
 それまでに育てていたAIに,そっち側のGemを作って,と指示しただけです。
 授業のカリキュラムやプレゼンで発表した内容,これがダメだ・これが不満だといった指摘のメモまで,ドキュメントを全部食わせました。
 もともと企画開発をやらせようとしていたんですが,うまくいかず,その都度,今のはこれがダメだよ,と覚えさせていって。
 完全にはうまくいかなかったんですけど,このダメ出しの蓄積が今こっちの刃になっているんです。

4Gamer:
 怪我の功名で,いいデータが溜まり,最強のメンターができたという。

石神氏:
 そうなんです。非常に良かったです。

4Gamer:
 Gemというか,Geminiを選んだ理由はありますか。

石神氏:
 Antigravityを使っていて,それと親和性が高かったからですね。

4Gamer:
 Antigravityでは,主に何をされているんですか。

石神氏:
 今は全ての企画やプロジェクトをAIと一緒にやっているんです。技術書を書いたり,アシスタントを作ったり,ホームページを作ったり。

 Play & Learnのサイトも,出展者向けのメールも全部やってくれていて。申し込みデータをスプレッドシートに読み込んで,そこをベースにメールを作って投げるところまで自動化するプログラムをAntigravityが作ってくれて。
 直したいときもそこに打てば直せる。Gmailの下書きまで自動で入るので,自分は確認して送るだけです。

4Gamer:
 Play & Learnの運営をほぼ1人で実現できているのも,それが理由なんですね。

石神氏:
 そうですね。もうAIがないと無理ですね。

4Gamer:
 人を増やしたいとは。

石神氏:
 なんとかしたいんですけど,全体的な収益的に,雇える状態にならないと申し訳ないというか。
 ただ会場が前回と同じだと,机のテーブルも基本的に同じで済むので,少しずつ楽にはなってきています。

4Gamer:
 今回で5回目の開催です。盛り上がりや手ごたえはどうですか。

石神氏:
 前回はいろいろ忙しかったのもあって,常連はみんな出すだろうと気を抜いていたら,如実に出展者が少なくて。
 しかも「東京ゲームショウ」と日程がぶつかってしまって,デジタルもやっている人たちが全員来なかったんです。

 縮小しても会場費は変わらないので,前回と同じではまずいと思い,早めから丁寧に動いて,それで増えた感じですね。

4Gamer:
 初めて来ましたが,盛り上がっているのが伝わってきました。

石神氏:
 本当に来ていただいて良かったです。


博物館設立に向けて


4Gamer:
 以前から構想されているシリアスゲームのアーカイブプロジェクトは,どれくらい進んでいますか。

東京シリアスゲームサミットでの石神氏の講演(関連記事)より
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石神氏:
 どこに行っても,やるべきだ,協力すると皆さんおっしゃっていただけるんですが,場所探しがまだ難航していますね。

4Gamer:
 ボードゲームだから,リアルにこだわっているのですか。

石神氏:
 物理的に体験できる場所が欲しいんです。情報を集めて残して,分析できて,それを教育できる機関にしたい。
 これがまさに博物館の定義そのものなので,博物館を作りたいんですよ。となるとやっぱり物理的な場所が必要になる。ネット上だけの博物館って,正式には博物館と呼ばれないので。

4Gamer:
 キュレーションサイトのようになってしまいますね。

石神氏:
 そうなんです。なので物理的な博物館が必要なのかなと思っています。

4Gamer:
 そこに置くものとしては,どういうものを想定されていますか。何か基準を設けるのですか。

石神氏:
 企業研修で作ったけど翌年には使わなくなったものとか,地域のイベントで作ったボードゲームだけど翌年は使われていないとか。
 一旦作ったけれどそのままだと消えてしまうものを収集していって,そこから学べるようにしたい感じですね。

4Gamer:
 美術館のように名作を置くのではなく,失敗作も含めて幅広く。

石神氏:
 失敗作も含めてです。もちろん名作も置きたいんですけど,現役で稼いでいるものは邪魔したくないので。
 一旦型落ちしたものをみんなに共有してもらって,研究材料にする。それが今できないんですよ。
 たとえばこの会場に出ているような会社に,「御社のゲームを勉強させてくれ。なぜなら,それよりいいものを作りたいから」とは言えないですよね。

4Gamer:
 なるほど。

石神氏:
 ただ,博物館にあるものなら,気軽に見に行けるわけです。防災系のゲームを作りたいと思った時に,そこに防災系のゲームが3本あれば,いくつかやってみて,これは向いている,これは違う,自分ならこう表現する,と考えたうえでゲームを作れる。
 それで絶対に,シリアスゲームは1歩進化すると思います。

4Gamer:
 シリアスゲームの全体のレベル感って,どう見ていますか。

石神氏:
 どの分野でもそうだと思うんですけど,まずはやる人が増えないことには山が大きくなりません。
 今は裾野が頑張って広がっている感じです。山が低いまま広がっているのは,少しもったいないと思っていて。
 とはいえ,これを否定したいわけではありません。裾野が広がらないとどうしようもないので。だから否定はしたくないけど,もうちょっと頑張ってほしい人が増えている感じはあります。

4Gamer:
 デジタルゲームも作るハードル自体は下がってきているので,同じように,一旦は低い山が広がっていくような気がします。

石神氏:
 そうですね。ボードゲームは紙とペンとサイコロで作れるので,もともと思いつきが実現しやすい分野なんです。
 エースを4枚から8枚にしただけの大富豪を作っちゃってもいいわけじゃないですか。それがいいかどうかは別として,やってみることで違いが生まれる。
 簡単に作れる土壌があったので広がってきたわけですけど,問題は今,全体をどう底上げするか。

4Gamer:
 なるほど。

石神氏:
 シリアスゲームという分野においては,目的を持ったものづくりだと思っているので,デジタルもアナログも手法のちょっとした違いでしかなくて,同じことだと思っています。
 だからやっぱり同じ問題にぶつかるし,そこは一緒に動くべきだと思っているんです。今あんまり接点がなかったりするので,どうしていきたいかも一緒に考えたほうがいい。

4Gamer:
 具体的なつなぎ方として,何かビジョンはあるんですか。

石神氏:
 シリアスゲーム工学のような設計論ができないか,という話を今しています。情報工学のように,シリアスゲームにも工学的な手法があっていいはずで,デジタルもアナログも同じ分野として捉え直せる。
 それが確立できれば,うちはこっち派だ,といった議論をベースに交流が生まれる。シリアスゲームサミットはまさにその実例で,デジタルの話だからアナログ勢が出ていく,なんて人は見たことがないです。

 コロナ前から,デジタルゲーム会社のプランナー育成講演に呼ばれることはちょこちょこあって。デジタルゲームは画質や音や物理演算といった「技術」側にみんな行ってしまうので,ゲームを作る技術自体が体系的に教えられていない。
 スペシャルクリエイター頼みになりがちなので,体系的なカリキュラムを話しに行く形ですね。

4Gamer:
 教えられる人が限られているのですね。たとえば,先ほどお話ししていた石神さんの企画アイデア出しAIがもし完成したら,公開していろんな人に使ってもらいたいですか。
 それとも自分で新しいものを出していくほうがいいですか。

石神氏:
 公開すると思います。完成して終わり,ということは多分ないので,公開しつつ自分用にもっと良くしていく。無料でも使ってもらって,課金してくれたらもっといいやつが使える,という形になると思います。

4Gamer:
 石神AI Maxみたいな。

石神氏:
 そうそう。理想はそうです。課金で一段上のバージョン,あるいは私のサポートが直接つくとか。一段上があるよ,っていう言い方になるんじゃないかなと。

4Gamer:
 AIに自分の持つ技術を,すべて詰め込めると思いますか。

石神氏:
 私自身は,こう思っているんです。「AIにできない仕事は,人間がうまく説明できていない仕事だ」と。

4Gamer:
 というと。

石神氏:
 今は「AIにできない仕事は人間だからできる仕事だ,だから素晴らしい」みたいな風潮がありますけど,私は逆だと思っていて。
 人間がしっかり理解できていて,人にも説明できて,理路整然と言えることはAIにもできるじゃないですか。そこまで理解できていることは素晴らしいことで,歴史があって,いろんな人が議論したおかげで整理されて綺麗になっているからAIが真似できる。

 センスや感覚でやっていて整理されていないからAIが真似できない,というだけの話で。それは個人的には誇れることではないと思っています。

4Gamer:
 職人芸のような。

石神氏:
 職人芸と言えばかっこいいですけど,それは説明が下手なだけなのかもしれない。一子相伝で守るのではなく,説明できて理解させられるようになって初めて,完璧に極めたと言えるんじゃないかな,と個人的には思っていて。
 極められていないからAIに真似できない,とちょっと思っています。

 なので私としては,AIにできることをむしろ増やしていきたい。今のAIはボードゲームを作れないんですけど,作れるように教え込めたらすごいはず。
 「AIに教えることができた」=「体系ができた」と言えると思うので,そのために努力していかなきゃなと。

4Gamer:
 人間が推論してしまう部分を,いかに言語化するか,ということですね。

石神氏:
 そうですね。なんとなく感覚や経験則でやっていることを,なぜそうなのかと体系立てて整理することで,AIも理解できるものになるし,それが結果,世界中で使えるものになる。
 AIが使えるもので良いものが生まれるのは,いいことだと思うので,どんどん生み出せばいい。

4Gamer:
 どんどん作って,どんどん出して。

石神氏:
 評価するのが大変だなとは思いますけど。「評価AI」を作るんじゃないですかね。

4Gamer:
 個人的には,遊ぶ人もそのうちAIになりそうだなと。ソシャゲの周回をAIがリアルタイム判断で全部やるみたいな研究もありますし。

石神氏:
 どうなっていくか分からないですね。

4Gamer:
 ですね。本日はお時間ありがとうございました。次回のPlay & Learnのプランをお聞かせください。

石神氏:
 一応半年ごとにやろうと思っているので,できれば同じ会場で,次回もなんとか同じくらいいっぱい出展してもらえたらなと。
 まずは続いたということが大事かなと思っています。目標的には秋にやれるといいですかね。

4Gamer:
 ボードゲームを知らない人を集めたいとか,シリアスゲームに触れてほしい人を集めたいとか,そういったビジョンはありますか。

石神氏:
 目的は,シリアスゲームと言われるものの幅を知ってほしいということなんです。何か1つだけ見ると,それがシリアスゲームのすべてだと錯覚してしまうので。
 さまざまな作品を見ることで,ここにある50個がすべてなわけじゃない,と感じられる。その気づきを得てほしいです。

4Gamer:
 オフラインならではの出会いがいっぱいあるなと感じます。

石神氏:
 このぐらいの規模だと,ちょうど1周できるじゃないですか。そんなことをやる人もいるんだ,それゲームにする人もいるんだ,といった気づきが少しでも刺さってくれるといいな。
 というのがこのイベントの狙いです。

4Gamer:
 ありがとうございました。


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